ふらりと現れたシリウスにドラコが連れて行かれてしまった。
リーマスとドーラの元へ行こうと歩き出すとジョージが後ろを着いてくる。
厨房はそんなに広くはないけれど人が多いから歩くのが少し大変。
振り向いて手を差し出すと嬉しそうに自分の手を重ねる。
「リーマス」
「やあ名前、ジョージ」
「ドーラは?」
「あそこだよ」
リーマスが差した先にモリーさんとフラーとドーラが居た。
ドーラの腕の中に居るテッドの顔を覗き込んで笑っている。
喜んでいるという事はテッドが何かしら反応を見せているのだろう。
「残念。テッドに会いたかったのに」
「ごめんね、テッドじゃなくて」
「冗談よ。リーマスにも会いたかったの」
少し拗ねていたリーマスを抱き締めると抱き締め返してくれた。
リーマスは今脱狼薬の研究に協力をしている。
紹介したのはキングズリーで、引き受けたけれど魔法薬を苦手としているリーマスはなかなか苦労しているらしい。
苦い顔をしているけれど、テッドの為なら頑張れると言う顔は父親の物。
「そうそう、シャロンが名前と話したがっていたよ。今もほら、見てる」
「本当だわ。行ってくる」
ジッと此方を見ているシャロンの元へ向かう為にリーマスと別れる。
再び手を繋いでジョージが隣を歩く。
それを見てシャロンがニヤニヤと笑っている。
「そんなにニヤニヤしないで」
「あら、私は二人がお似合いだと思うけど」
「だろ?流石シャロンだぜ」
「ジョージにあげるのも勿体ないけどね」
「名前はシャロンのじゃないよ」
いつもの言い合いが始まったのでチャーリーの横に避難。
チャーリーも二人を止める気はないらしい。
ミートパイを食べながら二人を眺めている。
私を見るとふわっと笑う。
「名前、仕事は慣れたか?」
「うん、何とか。ビルが色々とフォローしてくれるの」
「ビルがつい甘やかしちゃうって言ってた」
「お兄様は心配性なんだわ」
「お兄様か」
クスクス笑うチャーリーが私の頭を撫でる。
チャーリーこそが私のお兄ちゃんのような存在。
だからチャーリーに頭を撫でられるのは好きだ。
紅茶も一番好きなのはチャーリーの淹れる物。
今日は淹れて貰えそうにないのが少し残念。
「チャーリーは、シャロンとどうなの?」
「名前、大分前から気付いてただろ?」
「でも二人とも否定してたわ」
「信じてない癖によく言うよ」
頬を突つかれて、それでも笑顔を向ける。
チャーリーは溜息を吐いてこっそり耳打ちした。
その内容に驚いてチャーリーを見る。
じわじわと理解して嬉しさの余りチャーリーに飛び付く。
「きっと上手くいくわ」
「だと良いんだけど」
「大丈夫よ」
私が離れるとチャーリーが声を上げた。
賑やかだった厨房内が一気に静かになる。
チャーリーはシャロンの目の前に立つ。
厨房の皆が注目している中でチャーリーがシャロンの手を握る。
「チャーリー?」
「シャロン、俺と結婚してくれ」
「え」
シャロンは驚いて表情で厨房を見渡す。
皆がシャロンの返事を待っている。
暫くの沈黙の後、頷いたシャロンに厨房の皆が拍手をした。
モリーさんは大喜びでアーサーさんに抱き付いている。
私は二人に向けて杖を振り花を降らせた。
お祝い事が増えて皆で乾杯をやり直す。
いつの間にか隣に立っていたジョージが私の手を握った。
見上げると何故か面白くなさそうな顔をしている。
「どうしたの?」
「良いなぁ、って」
「ん?」
ジョージの見ている先を追い掛けるとしっかり手を繋いでいるチャーリーとシャロン。
顔を元に戻すとジョージが真っ直ぐ此方を見つめていた。
「名前、俺の事好き?」
「好きよ」
「男として?」
「勿論」
「その割には言ってくれないけど」
どうやらその事を思い出して拗ねているらしい。
確かにまだ一度も言った事はないけれど。
繋がっている手を思い切り引っ張って私も少しだけ背伸びをする。
するとちょうど目の前に来るジョージの頬に唇で触れた。
更に背伸びをして驚いて私を見るジョージの耳元で息を吸う。
「ジョージ、大好きよ」
嬉しそうにふんわりと笑うジョージの顔はとてもキラキラして見えた。
fin.
(20130402)
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