パーティーの前日、かなり急なお誘いだったにも関わらずOKの返事が来た。
忙しいだろうから駄目かと思ったのだけどなんとか時間が空いたらしい。
グリモールド・プレイスに向かう段階で現れたドラコを見てビルは私の機嫌の良い理由が解ったと笑った。
「ウィーズリー」
「話すのは初めてかな。ウィーズリーは沢山居るからビルって呼んで」
「…呼ばなければならない時は」
それを聞く限りドラコがビルを呼ぶ事はないだろう。
ビルが可笑しそうに笑うとドラコの眉が寄る。
姿眩ましをするから、とドラコの手を自分の手で包む。
ビルにはこう見えて結構意地悪な一面もある。
サッとビルの手を握って姿眩ましをした。
久しぶりに来るグリモールド・プレイスは住んでいた時と変わらない。
クリーチャーの掃除が行き届いてとても綺麗だ。
階段を降りて厨房の中へ入ったビルに続こうとしたら引っ張られて止められる。
ドラコを振り返るとどうしようという表情をしていた。
確かに、ドラコには入りづらいだろう。
中にはロンとハリーとハーマイオニーが居る。
「僕は…入っても良いと思うか?」
「ええ勿論。ビルだって何も言わなかったでしょ?」
「あいつは名前に甘いからだ」
「大丈夫よドラコ。シリウスは前に会ってるじゃない」
ホグワーツでの事を思い出したのか、ドラコの表情が少し和らいだ。
その隙に手を引いてサッと厨房の中へと入る。
後ろから慌てる声が聞こえたけれどもう入ってしまった。
中にはもう殆どの人が居てモリーさんとフラーとクリーチャーが料理を運んでいる。
ドーラがテッドを抱いていて、その横で幸せそうに笑うリーマス。
チャーリーと並んでいるシャロンに、三人で笑い合っているロン達。
アーサーさんとキングズリーとワインを飲んでいるシリウス。
ビルにからかわれているらしいパーシー。
そして魔法で紙吹雪を降らせているフレッドとジョージ。
来られなかった人の写真が壁際にずらりと並んでいる。
ドラコの手を引いたままロン達の所へ向かう。
気付いたハリーが笑顔で声を掛けてくれた。
けれど、ドラコを見て直ぐに笑顔を引っ込める。
「どうしてお前が居るんだ、マルフォイ」
「私が呼んだのよ。ほらドラコ、三人に言う事あるでしょ?」
三人の前に押し出しながら言うと勢い良くドラコが振り向いた。
三人は不思議そうに首を傾げながらお互いに顔を見合わせている。
ドラコはきっと三人とは仲良くなれると思うのだ。
「ほら、頑張ってドラコ」
「名前、僕は別に、」
「言う事、あるでしょ?」
頑張って、と背中を叩いて前を向かせる。
直ぐに俯いてしまったけれど、小さい声でドラコが謝るのが聞こえた。
直ぐに仲良くなるのは難しいけれど、これならきっと大丈夫。
サッと振り向いたドラコに腕を引かれながら三人を見ると目が真ん丸だった。
「ドラコ偉いわ」
「…こんな事を言いに来たんじゃない」
「でも大事な事よ」
「褒めてくれるのか?」
「勿論」
抱き締めて腕を伸ばしてプラチナ・ブロンドを撫でる。
良い子、と言ったら子供扱いをするなと怒られてしまった。
顔を見ると想像通り、少し拗ねた表情をしている。
「名前、これを言う為に来た…その、僕の、家に…いや、そうじゃなくて」
「なあに?」
「僕は、お前が好きだ」
「私も好きよ?」
「そうじゃなくて」
「あら、違うの?」
目を泳がせて言葉を探しているドラコ。
見つかるまで待とうと繋がっている手に力を込める。
何かを言おうとドラコが息を吸った時、腕が目の前に現れた。
ドラコと繋がっている手を離されて、ジョージの手に握られる。
「残念だったなマルフォイ。名前は俺のだよ」
「ウィーズリー…名前、本当か?」
「あ、うん」
ドラコはジョージを睨みつけてから空いている私の手を取った。
ジョージが文句を言ってもどうやら聞く気はないらしい。
「名前、もしウィーズリーと喧嘩したり何か酷い事をされたら僕の所へ来い」
「あら、頼もしい。そうするわ」
「必ずそうするんだ」
「ええ、そうね」
「駄目!駄目だから!」
ジョージはとても慌てていて、ドラコは満足そうに笑う。
けれど、ジョージの頬を突つくと直ぐに笑顔になった。
二人一緒に抱き締めて幸せを噛み締める。
(20130402)
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