あれから頻繁にジョージが来る。
魔法で鍵の開け閉めが出来るとはいえ、朝起きたらジョージが居た時はかなりドキッとした。
ジョージだったから良かったものの、他の人だったら間違いなくシリウスを呼んでいただろう。
気分的にかなり違うから、と合鍵を渡すと嬉々としてそれを使うようになった。
そんなジョージを見ているとまあ良いかと思えてしまうから私も甘いと思う。


「仕方ないね、ジョージは」

「本当よ。目が覚めたら居るなんて思わなかったわ」


苦笑いしながら言っているけれどそれでも楽しそうなビル。
ビルは私とジョージの事を聞いて喜んでくれた。
私がビルの幸せを願うようにビルも私の幸せを願っていてくれている。
それはとても嬉しくて幸せな事だと思うのだ。


「ジョージは良いやつだよ」

「うん、知ってる。だって、大好きな人の弟だもの」


ちょっとした意地悪のつもりで言ったのだけど、ビルが困ったように笑う。
それに耐えきれず直ぐに謝るととても曖昧な表情をした。


「それより、明後日は何か予定ある?」

「特には…ジョージが来るなら、それ位かしら」

「グリモールド・プレイスでパーティーをやるんだって」

「パーティー?」


うん、と頷いたビルは説明を始める。
騎士団のお疲れ様パーティーとロン、ハリー、ハーマイオニーの就職お祝いパーティーらしい。
素敵なパーティーだ、と二つ返事で了承すると早速手帳に書き込む。


「騎士団、って事はスネイプ先生達は来るの?」

「いや、どうかなぁ。ホグワーツは忙しいだろうからね」

「そっか…じゃあ会えないかもしれないんだ」


少しだけ寂しいけれどスネイプ先生もマクゴナガル先生も城は抜けられないだろう。
まして校長になったマクゴナガル先生は尚更難しいような気がする。
それにしてはダンブルドア先生はよく出掛けていた気がするけれど。


「仕事の後だし、良かったら一緒に行く?」

「うん、そうする」

「じゃあそうしよう。それなら仕事頑張らないとね」


言われて机に詰まれた書類の山を見る。
パーティーの為にもこの山を片付けなければならない。
明日になればまた増えるのだ。
気合いを入れて書類の山と向き合う。




早く片付けたくて残っていたから遅くなってしまった。
家に帰って何かを作るというのがちょっと面倒。
何処か寄ろうかな、と思いながらグリンゴッツを出る。
近いし、ウィーズリー・ウィザード・ウィーズにでも行こうか。
でも、もしアンジェリーナが居たら邪魔になってしまうし。
ああだから、ジョージは家によく来るのか。


「名前!」

「え?ちょっと、誰…ジョージ?」

「正解」

「どうしたの?」

「家に居ないから迎えに来た」


いきなり飛び付かれたけれど、ジョージが支えてくれたお陰で転ばずに済む。
そもそも飛び付いてきたのはジョージなのだけど。
ニコニコ笑いながら身体を離すと大きな暖かい手が私の手を包む。


「今日は遅かったんだな」

「ちょっと残って仕事をしてたの」

「お疲れ様。夕飯作ったよ」

「え?本当に?」

「うん。だから帰ろう」


そう言って首を傾げたジョージに頷いてみせると直ぐに姿眩ましをする。


部屋に入るとスープとサンドイッチが用意してあった。
スープが薄味で、ジョージは失敗したとしょんぼりしていたけれどどちらも美味しい。
人が作ってくれるというそれだけで美味しさは増すのだ。


「変だなぁ。ちゃんとこれの通り作ったのに」

「ちゃんと美味しかったわよ」

「俺が納得出来ないの。リベンジするから」

「楽しみにしてるわ」


任せて、と胸を叩いてレシピ本を夢中になって読み出す。
マグルの本屋さんでジョージが買ってきた物。
ジョージ曰く男だって料理出来なきゃいけないらしい。
別にジョージが料理を出来なくても気にしないのだけど。
レシピを読んでコロコロ表情が変わるのは見ていて楽しい。
こういう何でもない時間が当たり前になった今。
幸せだな、と思ったら自然と口角が上がった。




(20130402)
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