夕食の後片付けをドラコがやると言うので後ろ姿を眺める。
普段は絶対やらないだろうし、ナルシッサさんがやらせないだろう。
ぎこちない手つきのドラコを見るのは少しだけ恐いのだけど。


そういえば、ドラコに借りたままのローブがある事を思い出して寝室へ向かう。
あの日汚れてしまった部分や血はクリーチャーが綺麗にしてくれた。
触っただけで良い物だと解る黒のローブ。
ローブを持って戻ると片付けを終えたドラコがキッチンに立ち尽くしていた。
座るように促すと、ドラコは素直にソファーに座る。


「ドラコ、ずっと返そうと思ってたのよ。有難う」

「あの時の…今思えば、危なかったな」

「あの時のドラコはとっても頼りになったわ」


私から受け取ったローブを見つめてドラコは眉を寄せた。
その頬を突つくとバッと顔を上げて距離を取る。
けれど直ぐに元の距離に戻るとローブをソファーの上に置いた。
その時、いきなりバシンと音がしてフレッドが現れる。
部屋に直接姿現しをするなと言ってあるのに、無駄らしい。
フレッドは私を見てから隣のドラコを見てニヤリと笑った。


「邪魔だった?」

「私は構わないけど、直接姿現しするのは辞めなさい」

「失敗しちゃってさ」


ごめんね、と首を傾げているフレッドはドラコの隣に座る。
ドラコは眉を寄せてフレッドから距離を取った。
またフレッド一人な事を不思議に思いながら二人に紅茶を淹れる。
ドラコの好きなクッキーもあるから、それも一緒に持っていく。


「相変わらず名前にベッタリか?」

「それはお前だろう」

「俺は名前と仲良しだからな」

「部屋に姿現しだなんて、僕からすれば考えられないがな」

「名前は優しいから許してくれるんだよ」

「あら、許してはいるけど辞めて欲しいわよ」


そう言うとドラコは得意気に笑い、フレッドは不満だという声をあげる。
クッキーを差し出すとドラコは直ぐに手を伸ばして食べ始めた。
マグルの世界のお菓子だけれど昔からお気に入りらしい。
フレッドもクッキーを食べ始めたのを見て思わず笑ってしまった。
私より背の高い二人が並んでクッキーを食べているのは何だか可愛い。


「マルフォイは何しに来たんだ?」

「お前には関係ないだろう」

「俺は別にお前が嫌いな訳じゃないぜ」


ドラコが凄い勢いでフレッドを見た。
驚きすぎていて手からクッキーが落ちる。
フレッドはニヤニヤしながらカップに手を伸ばす。
私も驚いてはいるけれど喜びの方が大きい。


「図書館で何度も睨んでたくせに、よくそんな事が言えるな」


ドラコの言葉に私もフレッドも同時に首を傾げる。
図書館にフレッドが来るなんて滅多になかった。
偶に来るとしても目当ての本を見つけると直ぐに出て行く。


「マルフォイ、俺は誰でしょう?」

「は?」

「俺はフレッド・ウィーズリーだ。お前が言ってるのはジョージ」

「…これだから双子は」


舌打ちをしたドラコはフレッドを睨みつけた。
睨みつけられながらニヤニヤしているから余計にドラコの機嫌は悪くなる。
フレッドは楽しんでいるのは解るけれど良くないかもしれない。
流石に杖を出すなんて事はしないだろうけれど。
すっかり黙ってしまったドラコは眉を寄せたままクッキーを摘む。


「俺はお前を嫌う理由もないって訳だ。名前を好きな者同士だからな」

「なっ!何を言って!」

「お前も名前が好きだろ?友達として」


いきなり立ち上がったドラコの顔は真っ赤だった。
フレッドは相変わらずニヤニヤしている。
またドラコをからかっているのかと溜息を吐く。


「さてと、俺は元気な姿見せたし帰るよ」

「何か用事があったんじゃないの?」

「あー、うん。でも用事は終わったから大丈夫」

「そう?」

「じゃあなマルフォイ」


ドラコに向けてウインクをするとバシンと音がしてフレッドが消える。
用事があるような事を言っていたのにその用事は何だろう。
考え込んでいると腕を引かれ、振り向くと俯いているドラコが目に入った。
下から顔を覗き込むと頬がほんのり赤く染まっている。


「僕は、お前を好き、だと思ってる……友達として」

「ふふ、嬉しいわ。私も好きよ」


無言で頷いてドラコは帰ると呟いた。




(20130327)
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