やっとジョージに離して貰い、ドラコを探し始める。
皆がハリーと話をしようと動くので歩くのが大変だった。
途中まで一緒に探していたジョージもいつの間にか居ない。
この状態では仕方ない、と思いながらドラコを探す。


隅の方に並ぶブロンドの三人を見つけて思わず駆け足になる。
薄い青色の瞳が此方を向いて立ち上がったので思い切り抱き締めた。
口元を怪我しているけれど、他には大きな怪我は見つからない。
少し顔が黒かったりするのは皆そうなので気にはならなかった。
しっかり確かめるように抱き締めて、離れると今度は顔を確認する。
やっとドラコの無事をこの目で確かめられた。


「無事だったのね。良かったわ」

「名前こそ」

「ドラコ、何もされなかった?怪我は此処以外にない?」

「心配し過ぎだ。それよりも、お前はまた顔に怪我をしたんだな」


ドラコの指が傷を覆っているガーゼを撫でる。
そして腕の怪我にも気付いたらしく、そちらも撫でていく。
その時、後ろで見ていたマルフォイ夫妻が立ち上がった。
ルシウスさんは私を険しい目つきで見ている。
確かに以前は完全に敵として対峙していた。
ナルシッサさんはとても複雑そうな顔で私とドラコを見ている。


「ドラコ、こいつは穢れた、」

「父上、名前にその言葉は言わないで下さい」


ルシウスさんの言葉は最後まで続かなかった。
口を動かしているけれど声が出ていない。
私を二人から庇うように立って杖を構えているドラコ。
どう見てもドラコの仕業で、ルシウスさんは驚きで固まってしまっている。
すると、ナルシッサさんが一歩前に踏み出した。


「貴女は、ドラコの友達だと言いましたね」

「はい」

「マグル生まれ、だったのですね」

「母上、名前は僕を救ってくれました。名前は、魔法使いです」


ナルシッサさんはとても悩んでいるように見える。
結論が出たのか出なかったのかは解らないけれど、何も言わずルシウスさんを連れて大広間から出て行った。
一部の純血主義の人達が考えを改めるのはなかなか難しいのだろう。


「父上の事を許してくれ」

「気にしてないわ。だからドラコもそんな顔は辞めて笑って?」

「…名前、落ち着いたら会いに行っても良いか?」

「勿論。チェシャーと待ってるわ」


ふんわりととても綺麗に微笑んでドラコは私をもう一度抱き締める。
またね、と挨拶を交わして別れると反対方向に歩き出す。
何の心配もなくまたドラコに会えると思うととても幸せな気持ちになる。
自然と緩む頬をそのままに進むと、ビルが立っていた。


「ビル」

「ドラコと会えたんだね」

「うん。ドラコ、大きな怪我もなくて無事だったわ」

「良かった。あっちも無事だよ」


ビルが苦笑いをしながら指差した先を見て私も苦笑いを浮かべる。
大勢居て賑やかな大広間でも聞こえる大声で喧嘩をするシリウスとスネイプ先生。
スネイプ先生の周りには褒め称える言葉を掛ける人達。
それに対しても怒鳴り散らしていて喉に良くなさそうだ。


「ずっとあんな感じ?」

「そうだね。目が覚めてからあんな調子かな」

「…放っておいて大丈夫かしら」

「さあ…でも、オルコットも名前を探してるから、どっちに行くかは任せるよ」


喧嘩をしているシリウス達と差し出されたビルの手を見比べる。
杖はお互いに構えていないし、きっと大丈夫だろう。
それよりも久しぶりなシャロンとチャーリーに会いたい。
シリウスとスネイプ先生から目を逸らしてビルの手に自分の手を重ねる。


「あっちは良いの?」

「きっと大丈夫」

「そう。じゃあ、行こっか」

「うん!」


温かい手をしっかり握って一緒に歩き出す。
この手を守れたのだと、一歩進む度嬉しさが次々溢れて来た。




(20130318)
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