目が覚めると、ビルが本を読んでいた。
反対側にはシャロンがベッドに突っ伏して眠っている。
その横でチャーリーがクィディッチの本を読んでいた。
更にその横でパーシーが文字を書く羽根ペンの音が響く。


私が目覚めたのに気付いたビルは本を閉じて額に触れる。
冷たく感じていた手は今は温かい。
体もスッキリしていて意識もハッキリしていた。


「熱下がったね」


ビルに差し出された水で喉を潤す。
マダム・ポンフリーがせかせかと此方に来て私は医務室を出る事を許された。
シャロンを起こすと目一杯抱きつかれて危うく転びそうになる。
チャーリーが慌てて抑えてくれなければきっと私は転んでいたと思う。
隣を歩くビルを見上げて直ぐに俯く。
眠りに落ちる前にビルが言っていた事をしっかり覚えていた。


「あの、ビル…怒ってる?」


再び見上げるとビルは柔らかく笑う。
少しだけね、と言って立ち止まる。
先を歩く三人は気付かないようでどんどん離れていく。


「今度から体調が悪いと思ったら直ぐに医務室に行くんだよ」

「はい」

「無理はしない事」

「はい」


いつになく厳しいビルの声に俯いていた私の頭に手が置かれる。
見上げるとビルが笑っていて私の顔も緩む。
遠くでチャーリーの呼ぶ声に答えて歩き出す。


席に着くとビルとシャロンから沢山食べろとお皿に色々と山盛りにされた。
元々沢山食べられない私は隙を見てチャーリーのお皿に少し乗せる。
チャーリーは何も言わずに食べてくれるので二人にはバレていない。


「ビル、N.E.W.Tはどうだった?」

「やれる事はやったさ。パースはまだ心配しなくて大丈夫だよ」


ビルとパーシーがN.E.W.Tの話をするのをかぼちゃジュースを飲みながら聞く。
何れは自分も受ける試験なのだから聞いて置いても損はない。
聞くだけで今の私には難しい試験だと解る。


「パース、これくらいにしてくれ。試験は終わったんだよ」


尚も質問を続けるパーシーは物足りなさそうにしていたけれどピタリと黙った。
多分パーシーはまだビルを質問責めにしたいのだろう。
ビルは私だけに見えるように肩を竦めてみせた。
パーシーは今度は此方を向いたので身構える。
しかし何も言わずにベーコンを口に運んだ。


「あ、名前。明日約束してた写真撮らない?チャーリーには言ってあるし、パースも来てくれる」

「是非!シャロンに言わなくちゃ」


明日の事を考えるだけで嬉しくていつもより食事が美味しく感じた。
きっと私の頬は緩みっぱなしだった筈。




(20120711)
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