私の傷の治療を終えたビルが頭を撫でた。
その手を掴んで両手で包み込む。
昔からずっとずっと大切で大好きなビル。
そしていつでも私を撫でてくれた手。
あの夜もいつもと変わらずとても優しかった。


「名前?」

「ビル」

「ん?」

「結婚おめでとう」


笑顔を作ったけれどちゃんと笑えていたか解らない。
けれど、やっとこの言葉を言える事が出来た。
ビルが一瞬目を見開いて、そして微笑む。
有難う、という言葉を聞いて私はビルに抱きついた。
大切な人の幸せを祝ってあげられて、良かったと思う。
離れてビルを見上げると大好きな笑顔があった。


ビルに治療のお礼を言ってスネイプ先生の所に戻る。
スネイプ先生は血も拭き取られていて眠っているだけだった。
シリウスがとても不機嫌な顔で座っている。


「シリウス、怪我はしてない?」

「俺は平気だ」

「そう、良かった」

「ハリーを見たか?」

「見てないわ。居ないの?」


大広間を見渡してもロンとハーマイオニーは見つけたけれどハリーが見当たらない。
シリウスと大広間を探して歩き回り、暫く経った時、マクゴナガル先生の声がした。
そしてロン、ハーマイオニー、ジニーの声も。
慌てて外へ出るとハグリッドに抱かれたハリーが居た。
状況を理解して、咄嗟にシリウスの腕を掴む。
シリウスは今にも飛び出して行きそうだった。


あっという間に戦闘が始まった城内で、シリウスは叫ぶ。
そして怒りのままに死喰い人を吹き飛ばしていく。
シリウスの背中を守りながら私も失神させていたら見覚えのある姿が目に入った。
と同時に勢い良く飛び付かれてそのまま地面に倒れ込む。


「おい、名前を倒してどうすんだよ」

「だって久しぶりに会うのよ」

「チャーリー、シャロン」

「ああ!名前の顔に傷があるわ!付けたやつ許さない!」


パッと立ち上がったシャロンは死喰い人の方に勢い良く走り去る。
呆気に取られているとチャーリーに腕を引かれてその場に立たされた。
ちょうど現れた死喰い人を失神させるとチャーリーは私の頬を撫でる。


「まあ、無事ならオッケーだ」

「有難うチャーリー」


ニコッと笑うとチャーリーはシャロンの加勢に向かった。
シリウスから離れないようにしながら大広間の中へ中へと後退する。
途中、マルフォイ夫妻がドラコの名前を呼んでいるのを見掛けた。
一瞬加わりたいと思ったけれどシリウスの側を離れる訳にはいかない。
今のシリウスは怒りで背中側がとても無防備だ。


モリーさんがベラトリックスを倒した瞬間、ヴォルデモートが叫ぶ。
吹き飛ばされるマクゴナガル先生達に向かって呪文を唱える。
何とか間に合い三人は地面と衝突する事はなく、ホッと息を吐く。


「ハリー!」


誰かが叫んで、シリウスもハリーを呼んだ。
けれど、途端に大広間は静かになり、皆がハリーとヴォルデモートに注目する。
手を握られて見上げるとシリウスがハリーを見つめていた。
無意識なようで、力がとても強く痛いけれど離せとは言えない。
反対側の手も握られたと思ったらいつの間にかジョージが居た。
目が合うとジョージが僅かに微笑む。


ハリーとヴォルデモートはぐるぐると回りながら話をしていた。
その内容には皆が耳を澄まして聞いている。
スネイプ先生の話になった時ジョージが私を見た。
何となく言いたい事が解って肯定するように頷く。
するとジョージは眉を寄せて握っている手に力を込めた。


ヴォルデモートは、ハリーに向かって死の呪文を放つ。
ハリーは、ヴォルデモートに向かって武装解除を唱える。
そこからはあっという間で、ヴォルデモートは倒れた。
その瞬間爆発したかと思う程の歓声が上がる。
シリウスはハリーの名前を叫びながら走り出した。
シリウスに握られていた手が軽く痺れている。
この先ハリーとは幾らでも話が出来るだろう。
今はドラコを探そう、と足を踏み出したのに引き戻される。
気付けば思い切り抱き締められていた。


「終わった!名前も俺も無事だ!」

「ジョージ」

「無事で良かった!」


良かった、終わった、と繰り返すジョージの背中を撫でる。
ジョージの体温が心地良くて、暫くこのままで良いかもしれない。




(20130314)
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