スネイプ先生は表情が変わらないし言葉も少ない。
結局言いたい事がちゃんと伝わったか解らず終わった。
やるべき事はやったし、後は私の勉強と実力次第。
心残りと言えばドラコに会えなかった事だろうか。
イースター休暇だし、きっと家に居るのだろう。
幸いチェシャーは無事にドラコの手紙を持って帰ってきた。
ドラコの無事も解って私の作業は益々捗るばかり。
久しぶりに外に出た事も影響しているのかもしれない。
並べられた数種類の解毒薬を見て自然と頬が緩む。
「名前!ハリー達がグリンゴッツ破りだ!」
バタバタと音を立てながら帰ってきたシリウスの顔はとても嬉しそう。
得意気にも見えて詳しい話を聞くとハリー達がグリンゴッツに忍び込んでドラゴンに乗って脱出したらしい。
驚きと同時に無事だった事にホッとする。
ハリーが捕まれば直ぐ解るけれどこうして動向が解るのは嬉しい。
二人を追い掛けたロンも無事に合流出来たようで一安心だ。
「流石はジェームズの息子だ」
「好きね、その台詞」
「ジェームズが生きてたら同じ事言うと思うぜ」
嬉しそうに話すシリウスはきっと無意識にハリーとジェームズさんを重ねている。
それだけは相変わらずで、亡くした友達とそっくりなら仕方ないと思わなくもない。
何とか自分で気付いてくれたら良いのだけど。
出来上がった薬を瓶に入れながら心の中で溜息を吐く。
一度ハリーもシリウスに言ってやれば良いと思う。
「名前!来たよー!」
「ノック位しろ!」
したよ、なんてニヤニヤ笑いながら言ったフレッドとジョージ。
手にはそれぞれ鞄を持っていて、恐らく中は商品で一杯だ。
ミュリエルさんの家で出来ない通信販売を此処でやるのが最近のお決まり。
シリウスも止めはしないし、寧ろ二人に色々と協力していたりする。
梟が出入りするのはあんまり良くないと思うのだけど。
「手伝うよ、名前」
「有難うジョージ。でも大丈夫よ」
「じゃあ見てる」
そう言うと伸ばしていた手を引っ込める。
かと思えば鞄から商品を出してはそれを包んでいく。
薬を煮詰めながらそれを眺めていたら目が合った。
ニッと笑うと真剣な顔に戻ってまた作業に戻る。
その動作に何とも言えない違和感を感じて首を捻った。
「ジョージ」
「ん?」
「あ…何でもない」
「変な名前」
クスクスと笑って作業を再開するジョージはいつも通りに見える。
気のせいだったのだろうか、と改めてジョージを見てみるけれど解らない。
気のせいだろうという事にして鍋をかき混ぜる。
完成した薬を入れる為に瓶を取ろうと手を伸ばす。
しかし私が触れるより先にジョージの手が触れた。
お礼を言おうと顔を上げると思いの外距離が近くて驚く。
思わず身体を離すと、ジョージが首を傾げる。
「名前?」
「あ…ちょっと驚いちゃって」
「どうしたの名前。熱でもある?」
確かめるように額に触れた手は私より体温が高い。
熱がない事が確認出来るとジョージが安心したように笑う。
そういえば昔、ジョージの目の前で倒れた事があったっけ。
あの時は、私より小さなジョージが家まで運んでくれた。
ずっとあの時のままのような気がしていたけれど、今は私よりも大きい。
フレッドは昔と変わらず接する事が出来るのに。
「…解んなくなっちゃった」
「ん?何が?」
「何でもない。瓶貸して、薬入れなきゃ」
不思議そうに首を傾げるジョージから瓶を受け取る。
綺麗になっていく大鍋を見ながら心の中で溜息を吐いた。
(20130310)
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