散々怒られた私は家に軟禁状態に戻り、ミュリエルさんの家にもビルの家にも行けなくなった。
私が悪い事は解っているので反論する気もなくそれを受け入れて勉強する事に徹している。
元々マグル生まれ登録から逃げていた私は軟禁状態だったのだから別に何が変わった訳でもない。
毎日フレッドとジョージが来ては家事を手伝って帰って行くのも変わらずだった。
「お前ホグワーツでも図書館に入り浸りだっただろ」
「あら、どうして解るの?」
「どんだけ一緒に住んでると思ってんだ」
シリウスが積み上げられた本を見て解るよと呟く。
学生時代はこれに教科書もあったのだけど。
曖昧に笑顔を返してブックマーカーを挟むとクリーチャーが紅茶を持ってきてくれる。
「そういえば、よくドラコが隣で本読んでたわ」
「は?図書館でか?」
「うん。私の教科書とか図書館の本とか」
「それ、誰にも何も言われなかったのか?」
「特には…人も来なかったもの」
タイミング良く差し出してくれたクッキーを摘む。
クリーチャーの作るクッキーはとても美味しい。
クッキーを摘みながら本のタイトルを眺めていたらシリウスが一番上を取った。
「人避けの呪文でも掛けてたんだろ」
「あ、そうかも」
「それより、こんなのどうすんだよ」
シリウスが本のタイトルを眺めながら言う。
積んであるのは毒に関する本や蛇に関する本ばかり。
二年前、アーサーさんが蛇に襲われた事がある。
それを考えれば蛇の毒への対策をする事は無駄ではない。
そう伝えれば納得したようにシリウスが本を開いた。
「あいつの連れてる蛇は種類が解んねえだろ?」
「解らないけど、解毒薬を作る事は出来るわ」
「まあな。ベゾアールがあれば一番良いんだけどな」
確かにそうなのだけど、ベゾアールは手に入れるのが難しい。
それこそホグワーツにだってあるかどうか解らないのだ。
「あ、シリウス、私スネイプ先生に会いたいんだけど」
「は?」
「ホグワーツが危険なのは解ってるわ。でももうすぐイースター休暇だし」
顔を顰めるシリウスを見れば反対しているのが解る。
シリウスが協力してくれないのならビルに頼むしかない。
スネイプ先生の事情を知っているのはシリウスとビルだけなのだ。
けれどチェシャーがまだ帰ってきていないから連絡出来ない。
「俺は話なんかしないからな」
「私が話があるのよ。シリウスが許してくれるなら一人で行くわ」
「…仕方ないから、猫になれよ」
「うん、有難う」
渋々という言い方だったけれど、シリウスは協力してくれる。
とても優しい彼には沢山感謝しなければならない。
猫の身体は相変わらず慣れなくて心が折れそうだった。
けれど無事に校長室に入れたのは喜ぶべき事。
かなり久しぶりに訪れた校長室には今は誰も居ない。
ダンブルドア先生の肖像画を見つけて近付くと青い瞳がキラキラと輝いた。
「久しぶりじゃの。元気そうで何よりじゃ。首以外はのう」
「ご存知でしたか」
「独自の情報網があっての」
お茶目にウインクをするダンブルドア先生に笑顔を返す。
肖像画だと解ってはいるけれどまるで生きているよう。
「お手紙を読みました」
「信じてくれたかの?」
「…正直、答えは出ません。でもスネイプ先生を助けたいと思ってます。ビルとシリウスが助けてくれると言ってくれました」
「そうか…わしにはそれで充分じゃ。名前、君に託してしまった事を許しておくれ」
首を横に振るとほぼ同時に校長室の扉が開いた。
久しぶりに見たスネイプ先生は以前と何も変わらない。
私を見て眉を更に寄せるところまで前と同じ。
「聞きたい事と、言いたい事があって来ました」
「…聞いてやらん事もない」
私を憎々しく見ながらも話は聞いてくれるらしい。
よし、と気合いを入れて私は口を開いた。
(20130310)
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