ロンが眠ってしまった後、下へ降りると誰かに抱き付かれた。
受け身も何も取れなかった私は抱き付いた人諸共倒れ込む。
そこにちょうど良くあったクッションによって痛みはなかった。
顔を上げられる範囲で確認するとビルが杖を手に立っているのが見える。
そして私に抱き付いているのはフラーだった。


「名前!無事で良かったです!」

「あ、有難うフラー。あのね、でも少し離れてくれると嬉しいの」


フラーは私を潰している事に気付いたらしく慌てて起き上がる。
ついでに私の手も引いて起き上がる手助けをしてくれた。
咄嗟にクッションを用意してくれたビルにお礼を言うとフラーに手を引かれる。
元々フラーはとても友好的だったので納得はいくけれど私としては顔を合わせるのは少し複雑だ。
フラーは私を座らせると何故か隣にビルを座らせる。
首を傾げているとフラーはキッチンへと消えていった。
ポカンとしている私にビルは苦笑いを浮かべる。


「フラーは名前と仲良くなりたいんだって」

「え?」

「僕から名前を説得してって言われてるんだけど…どうするかは名前に任せるよ」


ビルはそう言って笑うと私の頭を撫でた。
私もフラーと仲良くなれるものならなりたい。
同じビルという人を好きになったのだ。
けれど、少し複雑な気持ちもまだあるのも事実。
複雑な気持ちが消えて仲良くなれる日が来るだろうか。


「ロンの事なんだけど、父さん達には言ってないんだ」

「え?」

「秘密にしておこうと思って。母さんが知ったらそれこそ大変だからね」


ビルが苦笑いをしながら言った事に私はとても納得出来る。
ロンのした事をビルが話してくれている間にフラーが紅茶を持ってきた。
その紅茶を飲みながら聞いたロンの話に開いた口が塞がらない。
人攫いに捕まっていたなんてモリーさんには聞かせられない内容だ。


「名前も、父さん達には秘密にしておいて」

「解ったわ。でも、どうして私を?」

「ロンが名前をとても心配してたんだよ。新聞を見たらしくてね」

「マグル生まれのリストね」


ビルは頷いてフラーは思い出したらしく怒り出す。
それをビルが苦笑いを浮かべながら宥めた。
マグル生まれだからって何も悪くないのだと主張するフラーはとても好ましく見える。
不意に何故私は彼女を遠ざけているのだろう、とぼんやり思った。


「あの、フラー」

「はい?」

「ちょっとね、ビルと話したい事があるの」


二人とも驚いたように顔を見合わせて、そしてフラーは頷いて立ち上がる。
お礼を言うと綺麗に微笑んで代わりに食事を食べていって下さいと言われた。


「どうしたの?」

「あのね、確かこの辺に…あった。これを読んで欲しいの」


いつも持ち歩いているダンブルドア先生からの手紙を渡す。
ビルが読んでどう思うかは解らない。
スネイプ先生を良く思っていないのも知っている。
けれど、ビルに話して意見を聞きたいと思った。
昔からそういう風にしてきたし、ビルにも協力して貰えれば、何よりも心強い。
巻き込みたくない気持ちもあるけれど手を借りたいという気持ちもある。


案の定ビルは読み終わった後も暫く羊皮紙を眺めたまま。
何かを考えて、きっと言うべき言葉を探している。


「名前、これは、本物?」

「本物よ。チェシャーが運んできたの」

「そう、か。じゃあ本物だね」

「あのね、私スネイプ先生の事を助けたいの。信じられるかは解らないけど、でもスネイプ先生に何かあったら遅いわ。話なら幾らでも聞けるもの」


ビルはやっぱり黙って考えを巡らせ始めた。
協力をしてくれなくても構わなくて、頑張れと言ってくれるだけでも良い。
それだけ私にとってビルの言葉は大きな大きな意味を持つ。


「昔した約束覚えてる?」

「あ…無理を、しない?」

「うん、そう。僕も出来る事を探してみる」

「え?本当?」

「なるべく、約束は守るんだよ」

「有難う!」


喜んだ私にビルは優しく微笑んでくれた。
この言葉だけで何でも出来そうな気がする。




(20130305)
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