シリウスがアーサーさん達の所と貝殻の家なら外出を許可してくれた。
それでもなかなか出掛ける気にならず、相変わらずドーラとだけ手紙を送り合う。
変わった事と言えばフレッドとジョージが遊びに来る事。
大体は何か悪戯をしてモリーさんやミュリエルさんから逃げる為らしい。
今日もやって来ては二人で洗濯機を眺めて何か一生懸命会議をしている。
「あいつ等また来てるのか」
「うん。モリーさんに怒られたんですって」
「まあ、予想はしてたけどな」
ドサリとソファーに座ったシリウスが新聞を置く。
最近では新聞も余り読まなくなってしまった。
チラリと見てみればマグル生まれ登録の単語が見える。
シリウスが苦い顔をしているのはきっとこの記事のせいだろう。
今の魔法省の理屈で言えば私は魔法力を盗んだ犯罪者。
尋問に出頭しなかったマグル生まれのリストに載っていたし、確実だ。
「ハリー達の居場所は解った?」
「いや、解んねえな」
シリウスはハリー達の事が載っていないかと新聞を捲る。
グリモールド・プレイスに居た事はリーマスとクリーチャーに聞いた。
けれどある日帰って来なくなり、それ以来行方が解らない。
「まあ、無事だと思う。ジェームズとリリーの子供だからな」
「優秀だったのよね?」
「ああ。ビルなんか目じゃないぜ」
「ビルは優秀だわ」
ニヤリと笑ったシリウスに思わず反論すると面白そうに笑い出す。
ハリーの両親を知らないので実際には解らない。
けれど、私の中でビルはとても優秀な魔法使いなのだ。
笑っているシリウスに背を向けてキッチンに立った時、玄関からバシンと音がする。
玄関まで行くとビルが立っていて、シリウスが慌てて出てくる足音がした。
「僕はビル・ウィーズリー。名前と初めて会ったのはホグワーツ特急で、チェシャーという梟の元飼い主だ」
ビルがそう言うとシリウスは安心したらしく戻っていく。
あの夜以来の二人きりの状況はとても気まずい。
「あの、ビル」
「ロンが家に来たんだ」
「え?ロン?無事なの?」
「無事だよ」
安心から息を吐くとビルの手が私の前に差し出される。
見上げると一緒に来て、と笑顔で言われ、頷いてその手を取った。
海が見える貝殻の家はビルとフラーの暮らす家。
なかなか来ようとは思わなかった場所。
けれど今はロンの姿を確認したくて急いで中に入った。
ビルが案内してくれた部屋でロンは窓の外を眺めている。
私に気付くと目を丸くして名前、と呟いた。
「ロン、無事で良かった」
「うん…名前も」
「一人なの?ハリーとハーマイオニーは?」
二人の名前にロンの肩が跳ねて、眉がグッと寄る。
ビルを振り返ると苦い顔で首を振った。
もしや、と思ったのに気付いたのかロンが小さく無事だと呟く。
そして俯いてしまったロンを見てもう一度ビルを振り向いた。
それだけで理解してくれたビルは頷いて部屋を出て行く。
後でちゃんとお礼を言いに行こうと決めてロンに向き直る。
「少し痩せたのね」
「名前、僕ハリー達のしてる事は何も話せないよ」
「解ってるわ、大丈夫」
「でも、名前はシリウスに知らせなきゃならない。そうだろ?」
ロンは私を探るような目で見て直ぐにハッとして顔を逸らした。
手を伸ばしてロンの頭を撫でると気まずそうに此方を見る。
「シリウスはあんまり気にしてないわ。心配はしてるけど」
「変なの。普通聞きたがるんじゃないの?」
「ふふっ、シリウスはね、ハリーを信じてるのよ。それに、貴方とハーマイオニーっていう友達と一緒に居るんだもの」
「…変なの」
くしゃっとロンは顔を歪ませて呟くと、そのまま俯いた。
(20130226)
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