シリウスの言う通り魔法省はマグル生まれ登録を始めた。
魔法力を盗む事なんて出来る訳がない。
大体、マグルの文明にそんな技術はないのだ。
そもそもマグルは魔法そのものを信じていない。
私からすれば馬鹿げた事だけれどマグルの世界を知らない魔法族には通用しないのだろう。
行かなくて良い、とジョージとシリウスが声を揃えて言うので私は行っていない。


「名前、居た!」

「どうしたの?」

「洗濯物干すんなら俺がやるから名前は中に入っててよ」


背中を押されて無理矢理室内へ入れられて洗濯物を奪われる。
やってくれるのなら良いか、と冷蔵庫をチェックしているとシリウスが現れた。
買い足す物をメモしていると横から腕が伸びてくる。
なんとなく予想していたので驚きはしないのだけど。


「買い物か?」

「うん。魔法薬の材料も欲しいけど難しいかしら」

「俺が行ってくる。お前は家に居ろよ」

「はーい」


玄関で再び振り向いたシリウスに手を振ると無言で出掛けていった。
やる事がなくなってしまったので掃除しようとするとクリーチャーに止められる。
悉くやる事を奪われてしまっていよいよ手持ち無沙汰になってしまった。
こんな事がもうずっと続いていて私は特にする事もなく日々を過ごしている。
騎士団の皆と連絡もなかなか取れないし、ドラコとなんて以ての外だ。
連絡を取る方法はないかと考えているのだけど思い付かない。
同様にジョージも帰る事が出来ずにずっと家で過ごしている。
ジョージも家族の顔を見て安心したいと思うので考えてみるけれど思い付かない。


「名前、終わったよー。あれ?シリウスは?」

「あ、有難う。シリウスは買い物に行ったわ」

「ふぅん」


ジョージがキッチンでカチャカチャと何かやり始める。
順応性が高いのか電化製品を使いこなすジョージは凄い。
きっとフレッドも簡単に使いこなすのだろう。
ぼんやり考えていたら紅茶が目の前に置かれた。
お礼を言うとにこやかに返事をして向かい側に座る。
確かクッキーがあった筈だ、と棚を見る為に立ち上がった。


「クッキー?」

「うん。クリーチャーが作ってくれたのがあると思うんだけど」


高い場所にあるのかな、と背伸びをしようとしたら影が出来る。
振り向くと真後ろにジョージが立っていた。
そういえば、あの日の事は結局有耶無耶なまま。
どうにかしなきゃと思った時には顔の横には腕があった。


「名前、昔は俺より大きかったのに」

「ジョージが大きくなったのよ」

「大きくならなかったら困るよ。名前を守れない」


ジョージが近付いて来て、そのまま抱き締められる。
離れようにもいつものようにしっかり抱き締められていて離れられない。
抵抗をしても駄目だと解っているので特に抵抗はしないけれど。
それに、いざとなれば呪文を唱えればなんとかなる。
本当はやりたくはないのだけど、もしもの場合は致し方ない。


「俺、名前を守る。シリウスじゃなくて俺が守りたい」

「ジョージ」

「俺じゃ頼りない?」

「そうじゃないけど」


ギュッと力を込められてジョージが何かを呟く。
聞こえなくて聞き返してももう言ってはくれなかった。
どうしようか、ととりあえず名前を呼ぶと腕の力が弱まる。
やっと見えたジョージの顔はまるで泣きそう。
ズキリと痛むのは、私の胸。


「ごめんね」

「何で名前が謝るの?」

「私ずっとジョージを待たせてるわ」

「勝手に待ってるのは俺だよ」

「そうだけど」

「名前の一番が誰かなんてずっと知ってる」


鼻の奥がツンとして来て私は慌てて俯く。
ごめんね、ともう一度謝るとまた引き寄せられた。




(20130226)
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