翌朝、やはり腫れてしまった目をどうしようかと悩んでいるのをシリウスに見られてとても心配された。
何とかシリウスを説得したのに朝食を運んできたチャーリーに見られてまた同じ事を繰り返す。
チャーリーは何が何でも、と朝食をテントで食べる事に決めたらしい。
紅茶を淹れてくれると言うので私は二つ返事で了承した。
チャーリーが淹れてくれた紅茶を飲みながらぼんやりと昨夜の事を思い返す。
悲しい気持ちは眠った事によって大分落ち着いた気もするけれど、結婚式の間はどうだろう。
私はちゃんとビルの結婚式を見届ける事が出来るのだろうか。
「名前、もし辛かったら結婚式出なくても良いんだぞ?」
「ううん、出る。チャーリーも、シリウスも居るし」
「…じゃあ、目をどうにかするか」
チャーリーが杖を振るとあんなに重たかった瞼が少し軽くなる。
渡された鏡を見るといつもよりは腫れているけれど気にならない位になっていた。
お礼を言うとチャーリーはふんわり微笑んで私の頭を撫でる。
思わず抱き付くとチャーリーも抱き締め返してくれた。
思えば私は昔から甘えるのはチャーリーだった気がする。
私の気持ちを知っていて年上だったからだろうか。
いつでも安心して甘える事が出来た。
「チャーリーが本当のお兄ちゃんなら良かったのに」
「俺はずっと名前のお兄ちゃんのつもりだったけどな」
ニヤリと笑ったチャーリーに自然と私も笑顔になる。
やっぱり、チャーリーの事も大好きだ。
無事に結婚式に参加出来たけれど、やはり途中で抜け出す。
幸いにもウィーズリー兄弟は案内に忙しく私は一人だった。
シリウスはリーマスとドーラの所へ送ったっきり帰って来ない。
もしかしたら昔の知り合いだって居るかもしれないし。
とにかく、一人になりたかったしジョージとは顔を合わせたくなかった。
昨夜の事を思い出すと余計にそう思う。
あの後、私は走ってジョージから逃げた。
ボロボロだった私はあの場で考えるなんて出来ない。
かと言って今朝になって考えられる訳でもないけれど。
なので今朝からジョージには一切近付かなかった。
それを皆は不思議に思っていただろう。
皆が踊っているテントから少し離れると本当に一人だった。
今日の為に用意した赤のドレスローブと赤のパンプス。
踊る訳でもないし、こうして一人になると変におかしく思える。
庭にあるベンチに座ると思い切り息を吐き出した。
「見つけた」
「…ジョージ」
「腹減らないか?サンドイッチ持ってきたんだ」
逃げようと思ったのに腕を掴まれて引き戻される。
仕方なくベンチに座るとオレンジジュースが渡された。
探したんだよ、と言われて返事の代わりに肩を竦める。
本当は見つかりたくなかったのだけど。
「名前、まだビルの事好き?」
「聞くの、それ」
「うーん…まあ、見てれば解るけど」
「じゃあ聞かないで」
「ビルを好きになった事後悔してる?」
「してないわ。良かったって思ってる」
「そっか。良かった」
嬉しそうに笑うジョージに首を傾げる。
すると、自慢のお兄ちゃんだからね、とニッと笑った。
確かにビルはウィーズリー兄弟の皆が自慢する。
ビルはそういう自慢出来る素敵な人。
オレンジジュースを口に運ぼうとした時、テントが騒がしい事に気付いた。
ジョージと顔を見合わせて一緒にテントに戻る。
近付いて来るとよく見えるそれは黒いマントに仮面を付けた死喰い人。
杖を出して中に入ろうとしたらその腕を掴まれてバシンと音がした。
(20130219)
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