ハリーの誕生日のディナーに突然現れたスクリムジョール大臣。
シリウスは咄嗟に犬に変身してリーマスとドーラは帰ってしまった。
ダンブルドア先生の遺言を伝えに来たらしい。
その間少しだけ色々な空気が流れたけれどそれ以外は楽しいディナーだった。


隠れ穴は既に定員で入れないので私とシリウスは庭にテントを張る。
ハグリッドも離れた場所にテントを張っていた。
シリウスの用意したテントは広くて部屋が二つある。
聞いたらわざわざそういう物を買ったらしい。


こっそりテントを抜け出して用意しておいた紙飛行機を飛ばす。
それは真っ直ぐビルの居る部屋に飛んでいって中へと消えた。
暫くして出てきたビルとこんばんは、と挨拶を交わして歩き出す。
果樹園の方に回ると大きな木があって、その木の下に並んで座った。


「起こしちゃった?」

「いや、起きてたよ。大丈夫」

「そっか」


ぷつり、と会話が途絶えてしまって私は自分の足を抱える。
ビルはただ何も言わずに私が話し出すのを待つ。
私が話があると呼び出したのだから当たり前だろう。
星が良く見える晴れで、辺りはとても静か。


「あのね、私ずっとビルに憧れてたの。ビルに追い付きたくて勉強も頑張ったし、沢山本を読んだし、沢山の人と話をしたわ」

「うん」

「私の一番はずっとビルなの」


言葉を切って隣に居るビルを見る。
真剣に話を聞いている顔で、心がくしゃりと音を立てた。


「ビルが好き。昔も今も…だから、幸せになってね」

「名前」

「私、ビルを好きになれて幸せだよ」

「…うん、有難う」


微笑んだビルに私は初めて自分からビルに抱き付く。
いつも優しくて、心配してくれて、時には叱られた事もある。
大事にしてくれて、私もビルが大事だった。
大好きだから、ビルには幸せになって欲しい。
言葉で伝わらない物も、今なら伝わる気がする。
背中に回した腕に力を込めるとビルの手が頭を撫でてくれた。


テントまで送ろうかという言葉を断るとビルは私の頬にキスをして帰って行く。
ビルの姿が見えなくなって、遂に堪えられなくなった涙が落ちた。
次から次へと自分の意思に反して流れる涙は落ちて膝を濡らしていく。
ビルを追い掛け始めてから絶対に泣かないと決めた。
けれど、堪えきれなくて、今までの分というかのように止まらない。
声を抑える事が精一杯で、次々流れる涙を拭く事はしなかった。
その時、誰かの足音が聞こえて人の気配を連れてくる。


「名前」


私を呼ぶ声が誰の物かなんて直ぐに解った。
でも其方を向く余裕なんてなくて、ただただ俯いたまま。
隣に座った気配を感じたと思ったら私の頭を撫で始める。


「名前」

「…ジョージ、一人に、して」

「無理だよ。名前が泣いてるのに」


そう言って私は腕を引かれてジョージの胸に倒れ込む。
身体を起こす気力もなくて、されるが儘だった。
ボロボロと零れる涙をジョージが指で掬い始める。
もう片方の腕が私の頭を撫でていて、その暖かさに止まらなくなりそうだった。
ジョージはいつだって優しい。


どれ位そうしていたのか解らないけれど、段々落ち着いてきた私は腕を伸ばしてジョージと距離を取った。
明らかに泣きすぎて重い瞼は朝にはきっと腫れてしまうだろう。
けれど泣いたお陰なのか、幾らか気持ちはスッキリとした気もする。
それでも、悲しい気持ちが完全に消えた訳でもないのだけど。


「有難うジョージ」

「ねえ、名前」

「ん?」

「俺の隣においでよ」


目が合ったジョージは、今までで一番真剣な顔をしていた。
今は何も考えられなくてそれを伝えようと首を横に振る。
不意にジョージの手が頬に添えられたと思ったら、唇が重なっていた。




(20130219)
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