翌日目が覚めると既に夕方でやはり頭が痛かった。
ワインなんて飲むもんじゃないと思いながらリビングに入る。
そこはクリーチャーが鍋をかき混ぜているだけだった。
私に気付いたクリーチャーはにこやかに挨拶をする。
カチャカチャと音がしたと思ったら紅茶が運ばれてきた。
「有難う。シリウスは?」
「ご主人様はまだ寝ていらっしゃいます!」
はきはきとそう言ってクリーチャーは鍋に向き直る。
確か薬があったような気がして棚を見ていると肩にチェシャーが飛んできた。
チェシャーはクリーチャーを細い目で見て嘴を鳴らし始める。
どうにも相容れないのは解っていたのだけどまだ駄目らしい。
どうやら以前ビルに対して悪態を付いた事が原因のようなのだけど。
チェシャーは相変わらずビルの事が大好きなのだ。
部屋に連れて行くと止まり木に真っ直ぐ飛んでいく。
チェシャーの為に窓は開いているのだけど出て行くつもりはないらしい。
此処に居てね、と撫でながら声を掛けると鳴いて返事をした。
リビングに戻るとそんなに経たずシリウスが入ってくる。
私よりもワインを沢山飲んでいたのに平気そうだ。
やっと見つけた薬を流し込む私をシリウスは鼻で笑う。
ムッとしたのでシリウスのカップに角砂糖を二つ落とした。
「お前何するんだよ!」
顔を逸らして自分のカップを引き寄せてシリウスから遠ざける。
シリウスがぶつぶつ言いながら眺めているのは甘くなった紅茶。
少し飲んでは甘い、と顔を顰めるのを見ながら美味しい紅茶を飲む。
すると、先程部屋に帰した筈のチェシャーが戻ってきた。
何事かと思ったら後ろから見慣れない梟が飛んでくる。
そのまま私の紅茶に突っ込んで、肩に乗ったチェシャーが目を細めた。
なんとかシリウスがその梟を助けている間に手紙を開く。
チェシャーが威嚇するようにカチカチと嘴を鳴らした。
「この時代に梟便とはねぇ」
「他に伝達手段があるの?」
「まあ、ねえけど」
肩を竦めながらシリウスが梟を窓から放す。
チェシャーはそれをずっと目を細めて見ていた。
「スネイプ先生からだわ」
「スネイプ?」
「そんな顰めっ面しないでよ。チェシャーが恐がるわ」
全く気にしていない様子のチェシャーは毛繕いを始める。
その様子をジッと見てシリウスは顰めっ面を此方に向けた。
特にそれを気にせず手紙を読み終えると杖を振って消す。
幾ら小柄だとはいえ重くなってきたチェシャーを膝の上に乗せる。
顰めっ面のシリウスはクリーチャーが運んできたシチューに手を伸ばした。
「ただドラコは無事だって教えてくれただけよ。返事が来るとは思わなかったけど」
「お前から出したのか?」
「そうよ。じゃなきゃ手紙は来ないわ」
ねーチェシャー、と声を掛けながらパンを差し出す。
その事が気に入らないシリウスは相変わらず顰めっ面。
それにクリーチャーが美味しくないかと声を掛けると慌てたように否定をする。
笑いながらそれを見てまたチェシャーにパンを差し出した。
(20130217)
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