疲労と悲しみですっかり参ってしまった私は家に帰ると真っ直ぐお風呂に向かった。
クリーチャーが用意をしてくれていた湯船に身体を洗ってから浸かる。
お湯の中にある自分の手を見て血の赤を思い出す。
ジョージの状態が浮かんできて、どくん、と心臓が跳ねた。
ぎゅっと目を閉じてその光景を振り払う。


スネイプ先生は味方なのに、セクタムセンプラはジョージに当たった。
死喰い人達の手前それは仕方なかったのかもしれない。
それか、本当にスネイプ先生はあちら側だとしたら。
けれどダンブルドア先生の手紙が嘘だとも思えない。
スネイプ先生がハリーのお母さんを好きならばハリーを守るのは理解出来る。
しかし、確かハリーのお父さんはスネイプ先生とは仲が悪かった筈。
シリウスとリーマスから聞いたのだから間違いないだろう。
お父さんの生き写しなハリーをスネイプ先生はどう思っているのか。
考えたところで私には解りそうもない。


お風呂を出てリビングに行くとシリウスがワインを飲んでいた。
隣に座って身体をソファーに沈めるとシリウスの手が伸びてくる。


「髪乾かさないと風邪引くぞ」

「うん、そうね」

「仕方ないやつだな」


シリウスはそう言うと杖を振って私の髪を乾かした。
お礼を言うと大きな手が頭を撫でる。
それが心地良くてされるが儘でいたらシリウスが笑った。


「シリウス?」

「いや…お前は年下なんだなって思っただけだ」

「今更じゃない?」

「普段俺を年上として扱わないのは誰だ」

「年上として扱ってるわよ」

「どうだか」


シリウスは疑わしい、と言ってワイングラスを空ける。
もう一つのグラスにワインを注ぐとそれを私に差し出した。
躊躇いながらも受け取るとシリウスは自分のグラスにも注ぐ。
乾杯をする前に私はワイングラスを傾けた。


「やっぱり美味しくない」

「まあ、それだけ飲め」


そう言われて仕方なくちびちびとワインを舐める。
美味しくはないけれど、確かにアルコールを摂取しないと眠れる気がしない。
色々な感情や考えがぐるぐると回って頭の中を占拠している気がする。


「シリウス」

「ん?」

「死なないで、ね」


自分で思ったよりも小さな声になってしまった。
けれど二人しか居ないこの空間では充分な大きさ。
シリウスは私の頭を撫でながら変な事考えるな、と言う。
シリウスもビルもフレッドもジョージもリーマスも、皆死んで欲しくない。
状況の全く解らないドラコやスネイプ先生も。
もう誰にも死んで欲しくないし、守りたいのだ。


「名前、いつもの前向きはどうした」

「…こんな日もあるのよ」


残っていたワインを一気に空にする。
一気に飲んでしまったせいか急激に眠くなってきた。
隣のシリウスの体温が心地良くて身体を寄せる。




(20130217)
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