「あーもう無理だわ!これ以上勉強したら頭がおかしくなりそうよ」


シャロンはそう言って机に突っ伏してしまった。
そんなシャロンに休憩にしようと伝えるととても嬉しそうに笑う。
本当は学年末試験の勉強をしなければならないのだけれど。


「魔法史はさっぱりだわ。大体の検討をつけるしかないわね」

「シャロン、チャーリーに教えて貰ってたじゃない」

「あぁ、あれは違うのよ。クィディッチの話をね」


苦々しく笑うシャロンはクッキーを取り出して食べ始めた。
確かに二人はクィディッチの話をよくしているけれど、見かけた時は確かに教科書を開いていたのに。
差し出されたクッキーを一枚貰い、私は教科書を捲る。
魔法界の歴史は私よりシャロンの方が詳しいと思うのだけどそうではないらしい。


「名前はビルに教えて貰うんでしょ?」

「教えて貰わないわ」

「え?どうして?」

「だって、ビルは今年N.E.W.Tだもの」


実際最近はビルに勉強を教えて貰う事が減っている。
ビルは気にしないでと言ってくれたけれど私が嫌だった。
N.E.W.Tはとても大事な試験だし、邪魔をしたくない。
同じ理由でO.W.Lのチャーリーにも教えて貰う事は避けている。
だからか最近二人に会う回数が減り、食事時くらいになっていた。


「それで最近ビルに会わないのね」

「邪魔したくないもの」

「名前、ビルだって息抜きするわよ。その時に会えば良いんじゃない?ビルは卒業しちゃうのよ?」


シャロンの言葉にチクリと胸が針で刺されたように痛む。
毎日楽しく過ごしていたけれど確実に近付く夏。
それはビルが卒業してしまうという事。
私はまだ六年間の学生生活が残っている。
偶にどうして私はもう少し早く生まれなかったのかと思う。
考えたところで何も変わらないのだけど。


「あ、ビル」

「え?」

「ハイ、名前」


振り返ると久しぶりに会うビルが立っていた。
いつものように私の隣に座って私の教科書を覗き込む。
当たり前だった出来事が久しぶりなせいでとても懐かしく感じた。
シャロンはいつものようにサッと身を隠す。
何故かいつも私がビルと居ると居なくなってしまうのだ。


「勉強は順調?」

「多分…魔法史が少し不安だけど、大丈夫だと思う」

「さすがは名前だね」


くしゃりと撫でられる頭に顔が緩む。
久しぶりのビルの手の感触はとても嬉しかった。
ビルは自分の鞄から教科書を出して広げ始める。
勉強するのだと理解して自分の教科書を片付けようとしたら止められてしまう。


「一緒に勉強しよう。これなら邪魔にならない」


だろ?なんて笑うから頷いて私は勉強を再開させる。
苦手な魔法史の勉強も隣にビルが居るだけで捗ってしまうからビルは凄い。

偶に解らないところは申し訳無い気持ちが一杯でビルに尋ねる。
快くとても解りやすく教えてくれるビルを見て、私はこうなりたいと思った。




(20120708)
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