「名前のミサンガのお陰で耳は取れなかった」


散々ハリーと言い合いをした後にリーマスがポツリと言った。
ジョージの傷を見ながらモリーさんが止血する声を聞く。
その時外で音がしてハリー達が直ぐに走り出す。
私は慌てて外に出ようとしたリーマスを呼び止めた。


「何の呪文なの?」

「セクタムセンプラだ」


サッと厳しい声で答えてリーマスも外へ出て行く。
私は記憶を掘り起こしてスネイプ先生に辿り着いた。
確かハリーがドラコにかけた呪文はセクタムセンプラの筈。
私はモリーさんに言って反対呪文を唱える。
後はジョージが起きたらハナハッカを飲ませなければ。
ジニーがハナハッカを持って来た時、ハリーも戻って来た。


「名前、ジョージは?」

「大丈夫。ちゃんと元に戻るわ」

「良かった」


ハリーの顔を見るとジニーと見つめ合っている。
少しだけ微笑ましい気持ちになった時凄い音がした。
アーサーさんの大声がしてフレッドと共に飛び込んで来る。
私はサッと立ち上がって場所を空けた。
アーサーさんが膝をついてジョージを見つめている。
それをポカンとした顔で眺めているフレッドの手を引く。
私の手がジョージの血で赤いのに気付いてフレッドは一瞬顔をくしゃりと歪めた。


庭に確か水道があった事を思い出して私は外に出る。
ちょうどドーラとロンが帰ってきたところだった。
これで後はビルとフラー、ムーディ先生とマンダンガスの四人。


手を洗おうと改めて自分の手を見て急に心がぎゅっと締めつけられる。
大丈夫、ジョージは生きているし、傷もちゃんと戻る筈だ。
アーサーさんとフレッドは無傷だったし、キングズリーもドーラもロンも無事。
ビルもフラーもムーディ先生もマンダンガスもちゃんと無事な筈。


息を吐いて震える手で蛇口を捻った時後ろで歓声が上がった。
振り返って見ると私の大好きな人とその婚約者。
手を洗うのも忘れて駆け出した私はフラーを抱き締めた。
驚いた様子のフラーだったけれど私の背中に腕が回る。


「マッド-アイが死んだ」


私はフラーを抱き締めたままビルの言葉を聞いた。
どうしてそうなったか、マンダンガスはどうしたのか。
ビルの涙声に顔を上げるとくしゃりと歪んでいた。
思わずビルの手を握るとほんの少しだけビルが顔を上げる。


居間へ戻るとどうして待ち伏せしていたのか、という話題になった。
誰かが裏切っただなんて余り話したい内容じゃない。
ぼんやり聞きながら自分の手を見てまだ赤いのに気付いた。
そういえば、先程洗おうとしていたんだっけ。


キッチンで手を洗って戻ってくるとビルとリーマスが出掛けようとしていた。
慌てて出て行った二人を追い掛けて外へと出る。
ギリギリ間に合って名前を呼ぶと同じタイミングで振り返った。
ポケットに入れてあった予備のミサンガを二人に差し出す。


「何があるか解らないから」

「有難う、名前」

「うん。リーマスも」


二人の手にミサンガをしっかり結んでから背中を見送る。
いきなり力が抜けてしまってその場にへたり込む。
ムーディ先生からは騎士団で色々な事を教わった。
先程までは確かに居たのにあっという間に居なくなってしまう。
息を吐いて活を入れるように自分の頬を叩いて隠れ穴に戻る。




(20130210)
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