魔法で出した担架でビルを医務室に連れて行くとジニーとハリー以外の皆が居た。
皆は何か話したがっていたけれど私はただただ黙ってビルの手を握る。
マダム・ポンフリーはそのうち目が覚めるだろうと手当てをしてシリウスの所へ行った。
シリウスは頭と腕からから出血している。
怪我をしている皆の手にミサンガはなかった。
ミサンガが役に立ったと喜ぶべきだろう。


ハリーが来て皆が何があったかを話している間、痛む背中を感じながらビルを見ていた。
ダンブルドア先生が亡くなった話になると心臓が痛くなった。
けれど、やったのはドラコではなくスネイプ先生。
ダンブルドア先生は私にスネイプ先生を信じて欲しいと言った。
話せないけれど信じられるだけの理由があるのだと。


首を振って意識をビルに戻して息を吐いた。
グレイバックに噛まれなくて良かったと思う。
本当に私が噛まれたって良かったのだ。
ビルはもうすぐフラーと結婚するのだから。


「ビル!」


アーサーさんとモリーさんが現れて後ろからフラーもついてくる。
モリーさんは私とは反対側に立ち、ビルの顔を確かめた。
今は傷が残っているけれど、そのうち綺麗に消えるらしい。
退かなければ、と思ったけれど身体が動かなかった。
握ったままのビルの手も離せそうにない。
不意に顔を上げたモリーさんが私の隣まで来ると思い切り抱き締められた。


「ああ、名前。聞いたわ、グレイバックからビルを助けてくれたんですってね」

「あ、私だけじゃないんです。シリウスも助けてくれて」

「ええ、ええ、勿論聞いてるわ。貴女も危険だったのに…何て言えば良いか」


抱き締める力が強くなって、私はシリウスの言葉を思い出す。
シリウスを見ると仕方ないという風に苦笑いしていた。
フラーがゆっくり近付いてきてビルの手を握るのが見える。


「モリーさん、私、一つお願いがあるんです」

「何かしら?何でも言って」

「…ビルとフラーの結婚を許して下さい」

「え?名前、でも、貴女はビルを」


首を振るとモリーさんは言葉を途中で切った。
シリウスもジニーもハーマイオニーも驚いている。
フラーは私の顔を見つめて目を細めた。
お願いします、と言うとモリーさんは考え込むように目を閉じる。
目を開けると優しく優しく笑って私の頬を撫でた。


「名前、本当に良いのね?」

「はい」


モリーさんがティアラの話を始めたのをきっかけにビルから離れる。
トンクスの手を引いてリーマスの隣に連れて行くとリーマスは首を傾げた。


「リーマスも、トンクスの事を考えるべきよ」

「…そうよ。私は貴女が狼人間なんて気にしないわ!」


トンクスがリーマスの胸元を掴んで揺さぶる。
リーマスはトンクスの目を避けていて、聞いた通りの言葉を言った。
年が離れていて貧乏で危険なのだと。


「トンクスは君が良いんだ」

「そうよ。お願いリーマス、ちゃんと考えて」

「俺もそう思うぜ」

「今は…そんな事を話す時じゃない」


アーサーさん、シリウスの言葉にもリーマスは皆の目を避けて言う。
マクゴナガル先生が素っ気なく言った言葉にも顔を上げなかった。




(20130203)
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