「ビル!!」


一人が呪いをあちこちに飛ばしている中、ビルに襲いかかろうとするグレイバックが見えた。
私は床を蹴ってグレイバックから庇う為にビルに飛び付く。
さっとビルの腕が私を守るように頭に回った瞬間黒い犬が飛んでくる。
グレイバックは体当たりをされて飛んでいった。
黒い犬はいつの間にか元に戻っていて私の腕を引っ張る。


「馬鹿か!噛まれたらどうする!」

「だって、ビルが噛まれるかもしれなかったのよ!ビルが噛まれる位なら私が噛まれる!」

「ふざけんな!」


それだけ言うと死喰い人に向けて失神呪文を打ち始めた。
シリウスは本気で怒っているように見える。
怒鳴られた事で私は座り込んだまま手を握った。
私は間違ってない、だってビルを助けたい。
昔から私の一番はずっとビルだった。


「名前、助かった」


ビルの言葉に私は自分の頬を叩いて立ち上がる。
今はシリウスの言葉について考える場合ではない。
死喰い人をどうにかしてドラコを止めなければ。


どれだけ経ったか解らなかったけれどスネイプ先生とドラコが目に入った。
ドラコは真っ青な顔をしていてスネイプ先生は終わったと叫ぶ。
その瞬間、ドラコのやる事が終わったのだと何処かで理解出来た。
本当にドラコがやったのかは解らないけれど、追いかけなければ。
けれど目の前にあのグレイバックが立ちはだかる。


「さっきは世話になったな。お前を噛んでやろう」

「貴方には誰も噛ませない」

「グレイバック、こいつには手を出すな。名前、早く行け」

「シリウス」


シリウスが背中を押し、少し離れた場所で振り返った。
グレイバックに呪いを飛ばす背中を見ながら走り出す。
ハリーが隣に並んで同じ速度で二人を追いかける。
あちこちから声がかかるけれど今は聞いてはいられない。
早くしないとドラコを助けられず、行ってしまう。


「ドラコ!」


叫ぶとスネイプ先生に押されながらドラコが振り向いた。
不安そうな、泣き出しそうな真っ青な顔で此方を見ている。


隣に居たハリーがいきなり倒れ、私の背中を何かが強打した。
振り返ると死喰い人が二人居てハリーに杖を向けている。


「ハリー、逃げて」

「でも名前」

「逃げなさいハリー!」


ハリーが走り出すのを確認して二人の死喰い人と向き合う。
失神呪文と相手の呪いがぶつかって火花が散った。
逸れた失神呪文が一人に当たって倒れたけれどもう一人の杖が此方を向いている。
駄目だと思った瞬間、死喰い人は倒れて私の体は宙に浮いた。
箒の上で操縦しているのは頬から出血しているビル。


「間に合って良かった」

「ビル…無事なの?」

「無事だよ。皆無事だ」


ホッと息を吐いた瞬間ガクンと箒が落ちた。
ビルは気を失っていて私は呪文で失速させるのに精一杯。
落ちていく途中で見えたのは先程の二人の死喰い人だった。




(20130203)
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