スネイプ先生に会いに来たと言うのに研究室には居なかった。
仕方なくあの真っ黒な姿を探しながら廊下を歩く。
もうすぐ夕食の時間だし、もしかしたら大広間に居るかもしれない。


何気なく角を曲がった所でスネイプ先生とぶつかりそうになった。
けれどスネイプ先生が支えているドラコを見て血の気が引く。
殆ど意識がなくシャツは恐らく血なのだろう、赤く染まっている。
慌ててドラコの身体を支えるとスネイプ先生が私を見た。


「医務室へ」

「はい、あの、ドラコはどうして、わっ」


スネイプ先生がドラコを離した事によって私は少しよろける。
なんとか足を踏ん張った私に反対呪文とハナハッカを飲ませるように言い残して去っていく。




マダム・ポンフリーにハナハッカを飲ませて貰ったドラコの手を握る。
先程聞こえてきた声でハリーがやった事が判明した。
きっとスネイプ先生が何かしらの対応をした筈。
ハリーが何故そんな魔法を知っていたかは解らない。
マダム・ポンフリー曰く闇の魔術だという。
傷の消えたドラコの手を撫でると瞼が開いた。


「…名前?」

「ドラコ、気分はどう?」

「此処は…医務室か」


少し掠れた声で喋りながら起き上がろうとするドラコを止める。
それでも起き上がってしまった彼に苦笑いを向けると眉間に皺が出来た。
何処か痛いのかと思ったけれどどうやらそうではないらしい。


「傷はちゃんと消えたわ。見える所しか解らないけど」

「…そうか」


ドラコは自分の手を確かめるように握ってそれから開いた。
水を差し出すと恐る恐るといった風に受け取る。
どうにかしてあげたいけれど、ダンブルドア先生の言葉が脳内に響く。
空になったゴブレットを置くとドラコは俯いてしまった。


「ドラコ、何か話したい事はある?」

「いや…話せないんだ」

「じゃあ、して欲しい事はある?」

「……抱き締めさせて、くれ」


ドラコは殆ど泣きそうな顔で私を抱き締める。
泣いても良い、と伝えると鼻を啜る音がした。
震えるドラコの背中をあやすように撫でる。
ドラコは確かに傲慢で悪い面もあるけれど本当は優しい子。
誰かを殺すなんてそんな事が出来る子ではない。
先程見たドラコの腕に予想していた印はなかった。
けれど、いつその印が腕に刻まれてもおかしくない。


「僕は…やらなきゃいけないんだ」

「ドラコ」

「やらなければ、僕は…」


震える声のドラコはもう喋れないようだった。
縋るように私に抱きついて涙を流す。
何を言えば良いのか解らずただそうしている事しか出来ない。


泣き疲れて眠ったドラコの頭を撫でていると影が出来た。
顔を上げるとシリウスが立っていてドラコを見て眉を顰める。


「そいつは無事か?」

「無事よ。少し疲れて眠ってるだけ」

「そうか」


くしゃくしゃと私の頭を撫でてシリウスは近くの椅子を引き寄せた。
ハリーの事でマクゴナガル先生に呼ばれたのだとポツリと話し出す。
ハリーがあの呪文を知っていたのは魔法薬の教科書じゃないかと言われたらしい。
スネイプ先生にその時の様子を思い出したのかシリウスは顔を顰めた。


眠るドラコの腕を取って薄い青色のミサンガを結ぶ。
これがいつかドラコの助けになってくれるように。
少しでも何か出来ないかと思った結果がこのミサンガ。


「ドラコを助けたいのに、これ位しか出来ないのよ」

「少しずつ探せば良い。見つかったら手伝ってやるから」


シリウスが優しく微笑むから、変に泣きたくなった。
泣きたくなっただけで泣かないけれど。




(20130201)
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