「わっ、やばっ」
大慌てて立ち上がり部屋の外に出る。
誰かにぶつかって文句の言葉が出た瞬間爆発音がした。
そろそろと部屋を覗くと作業をしていた机は真っ黒。
溜息を吐くと後ろからガシリと肩を掴まれる。
「おい、お前何してんだ?」
「ちょっと失敗しちゃって…部屋は元に戻すから大丈夫よ」
シリウスの手をやんわりと外して部屋の中に入ると焦げ臭い。
爆発したのだから当たり前なのだけど、普段はしないミスをしてしまった。
幾らドラコの事を考えていたとはいえ情けない。
杖を振って元に戻していたらシリウスが入ってくる。
「別に部屋はどうでも良い。それより怪我ねえか?」
「大丈夫、逃げたから。それに部屋を汚しちゃったらクリーチャーに怒られちゃうわ」
「ああ、まあな」
大体が元に戻って来た時にシリウスが杖を振って一気に元に戻った。
シリウスにお礼を言って作業を再開させようとしたらシリウスがそのままその場に座る。
私が呪文を掛けるのをただただ横で眺めるだけ。
「どうしたの?」
「お守りか?」
「あ、うん。フレッドとジョージの商品を思い出して、それを少しだけグレードアップさせようと思って」
「ふぅん…で、これか?」
私が作業している机にあるミサンガを取ってそれをジッと見つめる。
呪文を掛けた糸を使って一つ一つ編んでいくミサンガ。
先程は魔法を掛ける時に呪文を言い損なってしまった。
「禁じられた呪文は防げないけど、気持ちの問題よ」
「まあ、充分じゃねーの?」
「それシリウスの分」
「俺?」
「黒。ピッタリだと思わない?」
「…」
「名前で選んだんじゃないわよ、黒犬さん」
黒のミサンガを取ってシリウスの腕に結ぶ。
シリウスは暫く不満そうな顔をしていたけれどやがて溜息を吐いた。
首を傾げると伸びてきた腕が私の頭をぐしゃぐしゃにする。
「シリウス?」
「俺も手伝う」
「え?」
「悪いか?」
首を横に振るとシリウスは糸を手に取った。
呪文を唱えてから編み方を教えながら編んでいく。
時間が経つとミサンガは出来るけれど首や肩が痛くなってくる。
筋肉を解そうと首や肩を動かしているとシリウスに笑われた。
シリウスだって筋肉が固まっている癖に、と睨むと浮かぶのは余裕の笑み。
「シリウス、肩凝らないの?」
「俺はジェームズと悪戯の仕込みやってて慣れてんだよ」
「ふぅん…じゃあフレッドとジョージもそうなのかしら」
さあな、と言ってシリウスは出来上がったミサンガを眺める。
私のよりも上手に出来ているのを見て何とも言えない気持ちになった。
シリウスは手先が器用だから、と言っても複雑なのに変わりはない。
私も出来上がった物をミサンガの山に重ねると腕を掴まれた。
抵抗も気にせずシリウスは杖を振って先程のミサンガを私の腕に結ぶ。
「これはお前の」
「え?」
「自分の分数に入ってないだろ」
リストをトントンと指で叩きながら言われて気付いた。
確かにリストには私自身の数は入っていない。
腕に結ばれたミサンガはとても綺麗。
「有難うシリウス」
「おー。さっさと作るぞ」
また二人で糸を手に取って呪文を唱える。
(20130126)
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