クリスマス・ランチではあっという間にフレッドとジョージが隣に座った。
ビルはフラーと並んで座っていたけれど私の席からはやっぱり遠い。
隣からあれこれと話を振られてビル達を気にする余裕もなかったけれど。
フレッドとジョージの気遣いに申し訳なさと嬉しさが湧き上がる。
フレッドが私のグラスにオレンジジュースを注いだ時、モリーさんが突然立ち上がった。
そして放ったパーシーの言葉に全員が急いで窓に目を向ける。
確かにパーシーが硬い表情で大股で歩いてくるのが見えた。
けれど、パーシーの後ろの人物を見て慌ててシリウスの手を引く。
それに気付いたシリウスもあっという間に犬の姿になった。
無罪放免とはいえ、余り魔法省の人間とは会わない方が良い。
これは私もシリウスもお互い同じ考えだった。
中に入ってきたパーシーは硬い声でモリーさんにだけ挨拶をする。
それ以外の人に挨拶したいような素振りも見せずただ立ったまま。
フレッドとジョージがパーシーから私を隠すように前に立った。
スクリムジョール大臣がハリーを連れて出て行くとシリウスが低く唸る。
今にも飛び出しそうなシリウスの頭を撫でて止めると唸る事は辞めたけれど今度はパーシーを睨む。
その瞬間パーシーの目が一瞬だけ黒い犬を捉えて止まった。
「パース、貴方ご飯はちゃんと食べてるの?」
涙声のモリーさんの言葉にパーシーの目は動く。
次の瞬間、フレッド、ジョージ、ジニーが動いた。
パーシーに向かって擦り潰したパースニップが飛んでいく。
それは眼鏡に直撃して鼻息荒くパーシーは出て行った。
泣き出したモリーさんをリーマスが支えに行く。
アーサーさんは何も言わずにただパーシーが出て行った扉を見つめていた。
シリウスが小さな小さな声で一度だけ吠える。
モリーさんの代わりに片付けをしているとシリウスが隣に来た。
徐に洗い終わったお皿を手に取ると拭き始める。
後ろからモリーさんを慰めるアーサーさんの声が聞こえた。
「あいつは、あんな奴か?」
「違うわ。本当は優しいのよ」
「そうか」
「…シリウス、パーシーは戻って来ると思う?」
「自分から家を出た手前戻りづらいだろうな。俺は戻りたいと思った事はないから解んねえけど」
カチャリ、と音がして拭き終わったお皿が重ねられる。
シリウスと反対側にリーマスがポットを手に現れた。ポットの中には茶葉が沢山入っている。
「シリウスが手伝いなんて珍しいね」
「俺だってやる時はやるんだよ」
「いつもなら良いのにね。ねえ名前」
リーマスが悪戯に笑ってそう言うとシリウスが舌打ちをする。
クスクス笑ってリーマスはポットの中にお湯を注ぐ。
「リーマス、グリモールド・プレイスには来る?」
「行きたいけど、行けないかな。直ぐに戻らなければならないから」
「残念だわ。トンクスの事で話したい事もあったのに」
「…名前も知ってるのかい?困ったね」
「あら、私トンクスとは友達なのよ」
リーマスは苦笑いをしてポットをモリーさんの元へ運んでいく。
隣ではなんだかシリウスが嬉しそうにしていた。
(20130122)
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