ジニーを起こさないように部屋から出て物音を立てないように外へ出る。
泊まっていくようにとモリーさんに言われて断りきれなかった。
ウィーズリー家の皆は大好きだし、リーマスも居る。
それでも気分が重くなるのはやっぱりビルの事があるからだろうか。


少し歩いた大きな木の下まで来て其処に座り込む。
雪が積もっていてお尻は濡れてしまうけれど仕方ない。


ビルが幸せなら、という気持ちは嘘じゃなく本物。
笑っていてくれるなら私だって嬉しい。
それでもモヤモヤはずっと心の中にある。
息を吐くと白くて、まるでそのモヤモヤのよう。
本当は、ビルが私をどう思っているか解っていた気がする。
それを認めたくなくて必死で考えないようにしてきた。
期待していなかったと言ったら嘘になる気もする。
最近は自分がどう思っていたかよく解らない。
全てが後から取って付けたような考えに思える。
もう一度モヤモヤを吐き出すように大きく息を吐く。


「隣、良い?」


いきなりした声に驚いて振り返るとビルが立っていた。
頷いてから、濡れてしまうと言おうと思ったのにビルは躊躇いなく座る。
久しぶりに隣に座ったビルとの距離に心臓の動きが少しずつ早くなっていく。
やっぱりまだ好きなのだと自分自身に思い知らされているよう。


「眠れない?」

「うん、少し…ビルは?」

「名前が歩いていくのが見えたから」


そう言ってビルは自分の部屋がある辺りを指差す。
確かに、ビルの部屋からだとこの位置は見える筈。
目眩まし術を掛けておけば良かった。


「フラーは、良い子ね」

「…うん」

「私、ビルが幸せなら嬉しい」


間違いなく本心で、嘘なんて一切ない。
でもビルの顔を見られなくて落ちてくる雪を見つめる。
マフラーで顔を半分隠してから足元の雪を手に取った。
少し力を込めて握ると指先から冷えていく。


「ジョージに怒られたよ」

「え?」

「名前の事を考えろって」


思わずビルの顔を見たけれどビルは私と同じように雪を握る手元を見ている。
素手で触っているからビルも私も指先が赤くなっていた。


「僕も気を付けてはいたんだけど」

「あ、あの、ビル、謝らないでね」

「え?」

「別にビルが悪い訳じゃないし、謝って欲しい訳でもないし…私が子供なだけだし」


握っていた雪玉を下に置くともう一つ作る為に雪を掻き集める。
冷たさで手が痛いけれど、あんまり気にならなかった。
そう、ビルは全然悪くなくて、私がまだまだ子供なだけ。
だからと言って割り切る事が大人だとも思わないけれど。


「ビルは幸せなんでしょう?」

「うん」

「それなら良いの」


先程置いた雪玉の上に新しい雪玉を乗せる。
その上にビルがもう一つ雪玉を乗せて小さな雪だるまが出来た。




(20130122)
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