ハリーがグリモールド・プレイスに帰って来るとシリウスは途端に機嫌が良くなる。
ニコニコと笑っていてあちこちで魔法による雪が舞っていた。
「名前、シリウス見なかった?」
「シリウス?部屋に居ないかしら?」
「居ないんだ。もう出掛けなきゃ」
「先に行ってて良いのよ」
クリーチャーと焼き上がったクッキーを袋に詰めながら言うとハリーは首を横に振る。
隣に来て手伝い始めたハリーは何か言いたそうにクリーチャーを見た。
クリーチャーにシリウスを探して来て貰うように頼むとハリーは口を開く。
それは昨日の夜も少し聞いたドラコに関する事だった。
「やっぱりマルフォイは何かしてるよ。それに、スネイプはあいつを助けようとしてた」
「ドラコの事は否定しないわ。でも、スネイプ先生は騎士団の団員なのよ」
「スネイプが裏切ってるとしたら?」
ハリーの手の中でハートの形のクッキーが割れる。
気まずそうにそれをお皿に戻したハリーは別のクッキーを手に取った。
「それに、スネイプはマルフォイの母親と繋がってる」
「保護者だもの。繋がっていてもおかしくないわ」
「それはそうだけど」
詰め終えたクッキーをバスケットに入れるとシリウスが入ってくる。
明るいシリウスの空気にハリーは黙ってしまった。
「悪いハリー。バックビークの部屋に居て…どうした?」
「ううん、何でもない」
シリウスは説明を求めるように此方を見る。
けれど、ハリーの行こうという声に肩を竦めるしかなかった。
隠れ穴に着くと真っ先にフレッドとジョージに手を掴まれる。
ジニーも後ろを着いてきてあっという間にビルから遠ざかった。
ビルとはあれ以来だからどう接したら良いか解らない。
助かったと言えば助かったけれど、ビルと話したい気持ちもある。
食事の後も爆発スナップで遊び始めた三人を見ながらセレスティナ・ワーベックの歌を聞く。
フラーの声とセレスティナの声で隠れ穴はかなり賑やかだった。
セレスティナの声に耳を傾ける事でビルとフラーの会話を聞かなくて済む。
何処かでそれにホッとしている自分に嫌な気持ちになった。
「名前」
「あら、ゲームは終わったの?」
「誘おうかと思ったんだ」
ジョージが手に持った爆発スナップをひらひらさせながら言う。
首を振る事で不参加を伝えるとジョージは困ったように笑った。
フレッドとジニーが遊んでいる音が偶に聞こえてくる。
「シリウスとはどんな関係?」
「…え?」
「一緒に住んでるだろ?それに、仲良いし…俺の方が付き合い長いのに」
「ふふ、なぁにそれ」
少し拗ねているジョージが面白くて笑いが止まらない。
きっとジョージはもっと拗ねてしまうだろう。
チラリと見えたジョージの眉が寄っていたので間違いない。
まさかシリウスとの関係を疑われるなんて思っていなかった。
笑いが止まってからジョージの頭を撫でるとその手を掴まれる。
「俺真面目に聞いてるんだけど」
「ごめんなさい。でも、シリウスとは何もないわよ」
「…そう、それなら良いけど」
安心したように私の手を握ってからジョージはフレッドとジニーの所へ戻っていった。
(20130122)
193