「お嬢様、クリーチャーがやります!座っていて下さい!」


ぐいぐいと押されて鍋の前から追いやられてしまった。
最近はすっかり心変わりをしたクリーチャーは私をお嬢様と呼ぶ。
料理をしていたり掃除をしたりしていると慌てて飛んでくる。
そして今のようにあっという間に奪われてしまう。
クリーチャーのお陰でグリモールド・プレイスはとても綺麗になっている。


やる事がなくなってしまったので先程チェシャーが届けてくれた手紙を開く。
ダンブルドア先生によって特別に手紙をチェック受けない。
そんなチェシャーが運んでくるのはドラコからの手紙。
いつでも手紙を出せるようにと最近はドラコの所に居る事が多い。
そのせいかチェシャーは少しだけ機嫌が悪く、私を睨んでいる。


「ごめんね。でもドラコは優しいでしょ?」


チェシャーは小さく鳴いてから梟フードを食べ始めた。
今までチェシャーが怪我をしていた事はない。
きっとそれなりに優しくしてくれているのだろう。


読み終わった手紙を折り畳んで溜息を吐いた。
ドラコからの手紙には会いたいけれど会う時間がないと言う文字。
クィディッチや課題に追われていたとしても時間はあるだろう。
それならばやはりドラコは何かをしているのだろうか。
ハリーからの手紙にあったネックレスとドラコの関係。
ホグズミードに行かなかった理由は体調が優れないからとドラコは手紙で言っていた。
なんとかクリスマス休暇に入る前に一度会いに行けないだろうか。


「また何か悩んでるのか?」

「あら、来るなら来るって言って欲しいわ」

「ごめんごめん。思い付きでね」


ニヤニヤと笑いながら隣に座ったのはいきなり現れたフレッド。
私の手の中の手紙に手を伸ばすので慌てて隠した。
残念、だなんてニヤリと笑って早速クリーチャーが出してくれた紅茶を口に運ぶ。


「ジョージは?お店?」

「ああ、なかなかしつこいお客様が居てね」

「そうなの」

「来たがってたけどな」


そう言うとフレッドはちょうど入って来たシリウスと挨拶を交わす。
私を挟むように隣に座ったシリウスはそのままフレッドと会話を続ける。
やはり悪戯が好き同士気が合うのだろう。
料理を運んでくれたクリーチャーにお礼を言って先に食べる。
私が途中で味見した時よりも美味しくなっているスープ。
クリーチャーに料理を教わろうかと思った時私の手からパンが落ちる。
正確に言えば私が食べようと持っていたパンをシリウスがかじったのに驚いて手を離した。


「何するのよシリウス!」

「早くしろって言っとけ」

「伝えておくけど…その気ないんじゃない?」


私を無視して会話を続ける二人の間から抜け出してフレッドの隣に座り直す。
クリーチャーがそれに合わせて料理を移動させてくれる。
さり気なく新しいパンも用意してくれたクリーチャーは可愛い。
お礼を言うと嬉しそうに暖炉の前へと戻っていく。
接し方でこんなに変わるのだからハーマイオニーの言葉も正しいのかもしれない。


「名前、店に遊びに来てくれよ」

「クリスマスは隠れ穴に帰るんでしょう?」

「そのつもりだけど…それまで来ないつもりだろ」

「時間が合ったらね」


うん、と不満気に頷いたフレッドの頭を撫でる。




(20130122)
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