幾ら屋敷だと言っても同じ建物に住んでいれば顔を合わせる事もある。
今まで私が座っていた位置に座っているのはフラーだった。
私は隠れるようにシリウスの隣に座ってチビチビと食事をする。
と言っても折角の美味しいモリーさんの料理の味も解らない。
繰り広げられるビルとフラーの会話が嫌でも聞こえてくる。
フラーは色々な事をよく喋ると思う。


「ビル、素敵です!」


嬉しそうなフラーの声が聞こえて私は俯いた。
もう食欲すらも何処かへ行ってしまった気がする。
任務さえなければフラーが居ると解っている時間に厨房なんかに来ない。
こっそり溜息を吐くとポンと頭に手が乗せられた。
シリウスが無表情で料理を口に運びながらチラリと此方を見る。


私はモリーさんにごめんなさいと謝って厨房を出た。
出掛ける時間までまだあるし、まだシリウスが食べている。
自分の部屋に少し篭もろうと階段を登り始めると後ろから呼ばれた。


「名前、お腹が空くといけないわ。これを持って行って」

「え?モリーさん、これ」

「貴女を任務に行かせるのは本当は気が進まないのよ。でもシリウスも一緒だし、無事を祈ってるわ」


優しく微笑んだモリーさんはそのまま私を抱き締める。
モリーさんは笑顔も腕の中もいつでも暖かい。
優しくてついつい甘えたくなってしまう。
ダンブルドア先生に保護して貰った両親は元気だろうか。




ダイアゴン横丁で死喰い人の目撃情報があった。
今回はその情報を確かめる事が私とシリウスの任務。
犬の姿で隣に座っているシリウスの頭を撫でた。
時計を見て辺りを見渡して見るけれど姿はない。
情報にあった時間はとっくに過ぎてしまっていた。


「来ねえな」

「吃驚するじゃない。いきなり戻らないでよ」

「仕方ねえだろ。犬は喋れねえんだよ」


そう言ってシリウスは辺りを見回しながら私の頭を撫でる。
今日はもう来ねえかもな、と言うシリウスの言葉に頷く。
情報によると定期的に同じ時間に現れていたらしい死喰い人。
引き上げるという事で意見が一致してシリウスはまた犬に戻った。


やっぱり色々と有名なので出歩く時はまだ注目される事が多い。
普段出掛ける時は変身しないけれど任務の時は犬の姿でいる事が多かった。
ダイアゴン横丁に来たなら、と目当ての場所へ進む横を黒い犬が歩く。
ご機嫌なのかふさふさの尻尾が左右に揺れている。


目当てのお店に辿り着くと中で忙しそうに働く二人が見えた。
来ると言って来なかったのでオープンしてから来るのは初めて。
店内の賑わいぶりを見てどうしようか、と隣を見る。
いきなり人に戻ったシリウスは腕を引いてずんずん進んで行く。


「ちょっとシリウス」


私の制止の声も聞かずにシリウスは躊躇いもなく扉を開けた。
いらっしゃいませ、と聞き慣れた声に思わず頬が緩む。
そんな私を見てシリウスの指が頬を軽く摘んだ。
微笑んでいるシリウスを見上げていると背中に衝撃が走る。




(20130109)
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