去年のようにウィーズリー家の皆とハーマイオニーがやってきた。
去年と違うのはフレッドとジョージが居ない事とフラーが居る事。
フラーは私に対してもとてもフレンドリーだった。
私の心に広がった何とも言えない気持ち。
やっぱり本人を目の前にすると生まれる感情もあるのだ。


「おい、名前」

「ノックしてよシリウス」

「モリーが呼んでる。トンクスも居るぞ」

「…フラーは?」

「寝た」


仕方ないな、と溜息を吐きながらシリウスが私の手を引く。
最近じゃ私は部屋に引きこもっている事が多い。
私を連れ出すのはシリウスの仕事となりつつあった。
世話が焼けるとか何とか言いながらも毎回頭を撫でるシリウスは優しいと思う。


厨房に入ると相変わらずくすんだ茶色の髪のトンクスとモリーさんが居た。
紅茶を飲みながら、恐らくリーマスの事を話していたのだろう。
モリーさんが私を見てあの暖かい微笑みを浮かべた。
部屋に引きこもる私にモリーさんは何も言わないし何も聞かない。
ただただ優しく微笑んでいつも美味しいご飯を出してくれる。


「名前も紅茶で良いかしら?お腹が空いているならスープがあるわ」

「あ、じゃあ、スープお願いします」


モリーさんは頷いて立ち上がり、大鍋に向かって杖を振った。
掴まれたままの手を引かれるままに座るとくしゃくしゃと頭を撫でられる。
隣に座ったシリウスにはモリーさんが紅茶を差し出した。
最近シリウスとモリーさんの関係は幾らか良くなったらしい。


三人がトンクスとリーマスについて話すのを聞きながらスープを飲む。
相変わらずリーマスは断り続けているらしい。
今度リーマスが帰ってきた時余裕があったら聞いてみようか。


スープを飲み終わるとほぼ同時に厨房の扉が開いた。
ハリー!と立ち上がったモリーさんは確かめるようにハリーを抱き締める。
ダンブルドア先生を見たトンクスも慌てたように立ち上がる。
少し会話をしておやすみなさい、と慌ただしく出て行った。
ダンブルドア先生は私をチラリと見て厨房から消える。
先生に見られて慌てて背筋を伸ばすのは私だけじゃないだろう。


「いらっしゃいハリー」

「やあ、名前」


ハリーとの挨拶もそこそこに杖を振ってお皿を洗い始める。
そんな私にハリーは首を傾げたけれど、ちょうどアーサーさんが帰ってきた。
私を見るなり顔が見れたと微笑んで頭を撫でる。
それ以上は何も言わずにモリーさんをハグしに行く。
モリーさんといいアーサーさんといい優しすぎる。


「名前、紅茶淹れてやったから飲め」

「シリウスが淹れたんじゃないじゃない」

「良いから飲め」


グイッと腕を引っ張られてシリウスの隣に座った。
マグカップ一杯に注がれた紅茶を見て息を吐く。
マグカップを両手で包むと手から暖かさが広がる。
モリーさんの淹れてくれる紅茶は私の大好物。
けれどこの紅茶を飲む度チャーリーに会いたくもなる。


「名前?聞いてる?」

「え?」

「大丈夫?」

「あ、ごめんなさいハリー。どうしたの?」


いつの間にか隣に座っていたハリーが心配そうに此方を見ていた。
隣から呆れたようなシリウスの声が聞こえる。


「その…マルフォイは来るの?」

「来ないわ。行けないって返事が来たの」

「…そっか」


喜んで良いのか残念に思うべきかよく解らない表情をした。
そういうハリーの気持ちは解らなくもない。
そういえば、ハリーは今でもドラコが嫌いなのだろうか。
モリーさんに連れられていく背中を見ながら今度聞いてみようと思った。




(20130109)
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