チャーリーが淹れてくれた紅茶はやっぱり凄く美味しい。
久しぶりに飲める事が嬉しくて既にもう二杯目。
食後だというのにクッキーが欲しくなってしまう。


「名前、これ成功じゃないか?」

「本当?」

「ほら」


差し出されたチャーリーの手を確認する。
先程まであった火傷の痕が薄くなっていた。


「良かった。やっと完成したわ」

「どうやって作った?」

「ちょっと待って、確か此処に」


スネイプ先生から貰ったレシピを置いた場所を見る。
けれど置いた場所になく、辺りを見るとシリウスがパラパラと捲っていた。
ジッと見ているとそれに気付いたシリウスが顔を上げる。


「シリウス、それ返して」

「ああ」


ポンと投げられたレシピをチャーリーに手渡す。
シリウスの目がそれを追いかけていた。
首を傾げるとレシピから私へ目が動く。


「それ書いたの、スネイプだろ?」

「そうよ。相談したら色々考えてくれたの」

「ふぅん」


そう言うとシリウスはワインに手を伸ばした。
どうやらもう話すつもりはないらしい。
ドラゴンの本に夢中だったシャロンに話しかけている。
私はレシピを一つ一つ確認するチャーリーに向き直った。


「これなら作れそうだ。有難う」

「いいえ。遅くなってごめんね」

「バーカ。作ってくれただけで充分だ」


くしゃくしゃ、と大きな手が頭を撫でる。
相変わらずチャーリーの手は太陽のようだ。
その手を取って残りの火傷の痕に薬を塗っていく。
チャーリーは偶に擽ったそうに笑った。


「チャーリー、隠れ穴に帰るの?」

「いや、明日も仕事だから長居は出来ないな。名前に呼ばれたから来ただけだしな」

「そう…モリーさんが残念がるわ」

「まあ、あいつ連れてく訳にもいかないしな」


あいつ、と言いながらシャロンを指す。
いつの間にかシリウスとワインを飲んでいる。
ドラゴンについて語る二人は案外気が合うらしい。
そしてシャロンは笑い上戸らしく笑ってばかり。
シリウスが何を言ってもとても面白いらしい。


「あいつ連れて帰るの俺だぞ」

「ふふ、頑張ってチャーリー」


チャーリーの頬がヒクリと動いた。
反対の手を取って火傷の痕に薬を塗っていく。
此方の手の方が火傷の痕が多い気がする。


「名前」

「んー?」

「ビルの事、本当に平気か?」

「案外、平気よ」

「なら良いけど」


嘘吐いてるんじゃないか、と言いたげなチャーリーに笑顔を向ける。
ビルの事は自分でも驚く程本当に案外平気なのだ。
勿論今でも変わらずビルの事は好き。
でも、幸せならと思うのは強がりじゃない。
ビルには幸せになって欲しいのだ。


「まあ愚痴とか、色々言いたくなったらいつでも言えよ」

「…今でも良い?」

「良いぞ」

「ジョージに、真剣に考えてって言われたの」


塗り薬の容器に蓋をしながらあの日の事を話す。
弟としてじゃなく、男として見て考える。
あの日、ジョージとそういう約束をした。


「まず、名前はジョージをどう思ってる?好きか?」

「…解らないの。勿論ジョージの事は好きよ」

「とりあえずそれを考えたら良いんじゃないか?」


薬を乾かすようにチャーリーが手をパタパタ振りながら言う。
ジョージの顔を思い出すと得意気に笑った顔だった。




(20130108)
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