リーマスが人狼と暮らす任務に行ってしまうと屋敷はとても静かだ。
会議があったり来客があったりすると多少は賑やかくなるけれど。
シリウスはなんと私と一緒なら外出しても良いとダンブルドア先生に許可を頂いた。
その為かとても機嫌が良く以前よりも相当フレンドリーになっている。


「名前、そろそろこれ入れるんじゃない?」

「ううん、まだ。もう少し煮詰めなきゃ。それより話って?」


時間が空いた私はスネイプ先生に貰ったレシピを試している最中。
そのレシピは少し前に現れたトンクスがペラペラと捲っている。
挨拶もそこそこに相談があると言ったきりその事を口にしようとしない。
今日のトンクスはいつもの鮮やかな髪色ではなくくすんだ茶色だ。


「名前、ビルに告白したの?」

「したわ。振られたけど」

「何て言われた?」

「妹だと思ってるからって」


そのビルから手紙が届いてフラーと婚約したと伝えられたのは最近の事。
塞ぎ込んだ私をあの手この手で連れ出したシリウスは相変わらず連れ出そうとする。
リーマスは何も言わずただただ側に居る事が多かった。
トンクスは溜息を吐いてレシピを捲る手を止める。
どうしたの?と二回目の促す言葉を掛けるとトンクスは今度は大鍋を見つめた。


「リーマスに振られた」

「リーマスに?」

「年が違いすぎる、人狼だから、そういう理由でね。そんなの気にしないって言ったのに」


リーマスの言いそうな事だな、と思いながら大鍋をかき混ぜる。
トンクスがリーマスに想いを寄せているのはなんとなくそうじゃないかと思っていた。
もしトンクスの想いをリーマスが受け止めたらそれはとても素敵だと思う。


「シリウスから聞いた事があるんだけど、リーマスは人狼だという事を昔から負い目に感じていたみたい」

「関係ないわ。あの人が人狼だろうとあの人はあの人だもの」


トンクスは溜息を吐いてテーブルに突っ伏した。
そんなトンクスの頭を撫でると目だけが此方を向く。
今のトンクスはすっかり恋する女の子の顔だ。


「名前は、ビルの事はどうするの?諦めるの?」

「諦める…しかないと思うわ。ビル婚約したの」

「えっ!?」


トンクスはガタンッと音を立てて立ち上がる。
それと同時に暖炉からも同じような声がした。
暖炉を見るとこれ以上ない位驚いた顔のシャロン。


「あら、いらっしゃいシャロン」

「名前、平気なの?私、ビルに文句言いに行くわよ?」

「行かなくて良いわシャロン」


今にも暖炉に飛び込みそうなシャロンを止める。
トンクスも座って貰ってシャロンを隣に座らせた。
同時に暖炉が燃え上がりチャーリーが出てくる。


「チャーリー!ビルが婚約したのよ!名前はどうなるのよ!」

「は?名前、本当か?」

「本当よ。シャロンちょっと落ち着いて」


ムスッとした顔でシャロンは腕と足を組む。
そんなシャロンの頭を撫でながらチャーリーが座った。
大鍋の様子を見ながら残りの材料を全て入れる。
ジュッ、と材料が溶けていく音がした。


「私はもう去年ビルに振られたの。ショックかと聞かれたらショックだけど、ビルが幸せになるならそれで良いわ」


撹拌しながらそう言うとチャーリーがシャロンの口を塞ぐ。
何か言っているようだけれど篭もってしまって解らない。


「名前が良いなら良いだろ。暴れるな」

「暴れないわよ!」

「名前は、ビルが幸せならそれで良いの?」

「うん。トンクスもそうじゃないの?」


トンクスは考え込むように黙り込んでしまった。
首を傾げるチャーリーとシャロンに笑顔を向ける。




(20130108)
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