「グリモールド・プレイスは問題ないじゃろう。ただ、シリウスはクリーチャーへの態度を改めねばならぬ」


隣でシリウスが居心地悪そうに動いた。
ダンブルドア先生はそれをもお見通しらしい。
悪戯に微笑むと先生はシリウスを先に退出させた。
外で待ってると言い残してシリウスは犬に変身して出て行く。


「さて、名前。君はドラコと仲が良かったのう?」

「はい」

「死喰い人の中でのルシウスの立場を考えれば、来年はドラコにとって辛い年になるじゃろう。ドラコを、支えてくれるかのう?」

「それは勿論です。でも、辛い年というのは?」


ダンブルドア先生はそれには答えずにただ満足気に頷いた。




隣を歩く黒い大きな犬は何処か機嫌が悪い。
けれどグリモールド・プレイスの外という事が嬉しいのだろう。


「どうしてその姿で来たのかしら。貴方の無実は完全に証明されたと思ったけど」


黒い犬にだけ聞こえるように呟けばあっという間に姿が変わる。
見下ろしていたのに今度は見上げなければ顔が見えない。
ニヤニヤ笑いながら此方を見下ろすシリウス。
気にしないようにして歩いていても彼の足では直ぐに追いつかれる。


「シリウス?に、名前?」

「あらハリー。元気?」

「元気だけど…どうしたの?」

「ダンブルドア先生に用事があったの」


ハリーを抱き締めてからくしゃくしゃな髪に指を通す。
相変わらず好きな方に跳ねている髪はふわふわ。
その感触が気持ち良くて撫でているとドラコとクラッブとゴイルが現れた。
ハリーとシリウスを見てドラコの眉が寄る。
同じようにハリーとシリウスもドラコを見て身構えた。


「ハイ、ドラコ」

「ああ…お前達先に行け」


ドラコは警戒するようにシリウスを見る。
シリウスはシリウスで小さな声でこいつが、と呟く。


「マルフォイ、お前の父親に魔法省で会った」

「ポッターに言われなくても知っている。名前に聞いた」

「あいつは名前を吹っ飛ばした」

「ハリー、そんな事言わなくても」


ハリーを慌てて止めたけれどドラコには聞こえていたらしい。
ピクリと眉が動いて薄い青色の瞳が一瞬ハリーを睨む。
けれど直ぐに視線を逸らして私の頬で止まった。
ハッキリとしていた傷はもう薄くなっていて殆ど消えている。


「…顔の傷は、父上のせいか?」

「解らないわ。気付かなかったもの」

「父上のせいだったら、すまない」

「あら、ドラコが悪い訳じゃないのよ」

「おい、マルフォイジュニア」


いきなり口を開いたシリウスに全員其方を向いた。
怪訝な顔をするドラコの頭を撫で始めたシリウスに更に驚く。
ドラコも驚きで固まってしまい、シリウスを見つめている。


「名前を心配するんだったら家なんか出ちまえ」

「は…?」

「行き先なら家に来れば良い。面倒なら名前が見る」

「シリウス、僕も其処に行くんだよ?」

「心配すんな。部屋は離す」


今やシリウス以外がポカンとしていた。
けれど、ドラコがグリモールド・プレイスに来るのは良い提案だと思う。
勿論ハリーとドラコは好き合ってはいないから色々思うところはある筈。
でも、シリウスの提案はとても良いもののように思える。
口を開こうとしたらガシッと手を掴まれた。


「考えておけマルフォイジュニア。帰るぞ名前」

「え?あ、またねハリー、ドラコ」


同じように唖然としている二人に手を振って別れを告げる。
私の手を引きながら前を歩くシリウスはとても機嫌が良い。




(20130108)
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