「名前ー!来いよ!」
大広間に入ると大きな声で呼ばれ、そこにはチャーリーが居た。
その横にポニーテールの赤毛が見えて私の頬は簡単に緩む。
けれど、昨夜のチャーリーを思い出して少し躊躇う。
私の中でまだ昨日の出来事は戸惑いを生むには充分だった。
迷っているともう一度名前を呼ばれて今度こそそちらへ向かう。
「おはよう、名前。此処空いてるよ」
「おはようビル」
ビルに促されるまま座ったけれど、ビルとチャーリーに挟まれる形になる。
今までに何度もあったけれど変に緊張してしまう。
いつものようにビルとチャーリーがあれこれ取ってくれる。
二人にそれぞれお礼を言って私はオレンジジュースを飲む。
チラッとチャーリーを見ても昨日の雰囲気は全く無い。
「名前、どうした?」
「チャーリー?」
「俺が別人に見えるか?」
ニッと笑ったチャーリーはやっぱりいつものチャーリー。
ホッとして首を振って見せて私はコーンフレークを口に運ぶ。
いつも通りのチャーリーにホッとしたら急に眠気が襲う。
目を擦ってオレンジジュースを流し込む。
眠そうだと笑われてしまい私はまた目を擦った。
「名前、寝るんなら部屋に行ったらどうだ?」
「寝てないわ」
ビルとチャーリーがホグズミードに向かうのを見送って談話室に戻ったらパーシーが本を読んでいたので隣に座った。
最初こそ私も読みかけの本を読んでいたのだけれど、気付いたら文字が踊っている。
集中出来なくて一ページも進まない本を眺めながらパーシーに凭れ掛かっていた。
私からはパーシーの顔は見えないけれど嫌そうな声を出しながらも退かない。
なんだかんだ言っても彼は優しいのだ。
さすが七人兄弟の三男だなぁなんてぼんやり思う。
「眠いんだろう?」
「ん?んー…そうね」
どうにも瞼が重くて私の意識は体に従うままに手放される。
ふわふわした意識がフッと持ち上がって私は目を開けた。
膝の上にはいつの間にか閉じられていた本。
そうか、眠ってしまったのか、と目を擦る。
そういえばパーシーに凭れ掛かって眠ってしまった。
謝らなければ、と体を起こして振り返って私は言葉を失う。
「あぁ、起きた?」
パーシーだと思っていたのに顔は高い位置にあるし、眼鏡もかけていない。
何よりもパーシーはこんなに髪の毛が長くはなかった。
驚きの余りバッと離れたけれど私の頭は真っ白なまま。
「ビル」
「よく寝てたよ」
パーシーは?とかどうしてビルが?とか聞きたい事は沢山ある。
けれどどれも言葉にならず名前を呼ぶのに精一杯。
辺りを見渡しても、何処にもパーシーは居なかった。
「あの、ビルごめんなさい」
「大丈夫だよ。それより名前にお土産があるんだ」
ニコッと笑って私の頭をくしゃっと撫でる。
ああもう、と緩んでしまう頬を抑えて俯く。
並べられたお菓子のお土産よりもビルの方が輝いて見える。
それでもビルがくれたお菓子もキラキラ見えるから私はどうしようもない。
(20120706)
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