マクゴナガル先生のお見舞いから帰って直ぐその知らせは飛び込んできた。
バタバタする中でシリウスが立ち上がる。


「俺も行く」

「駄目よシリウス。貴方は此処に居なきゃいけないのよ」

「ハリーを助けなきゃいけねえんだ。俺は行く」


口を開いた瞬間肩に手を乗せたリーマスがゆっくり首を振った。
止める事は出来ないから諦めろという風に。




魔法省に着くとハリーとネビルが死喰い人に囲まれていた。
それぞれ死喰い人と戦う中、私も失神呪文を唱えながらハリー達の所へ向かう。
いきなり私の前に現れた死喰い人の髪は綺麗なシルバーブロンドだった。


「ルシウス・マルフォイ」

「ほう、私を知っているのか」


ニヤリと口角を上げ杖から閃光が放たれる。
盾の呪文を唱えたけれど飛ばされてしまい、背中を打った。
咳き込んでいる間にルシウス・マルフォイを見失う。
遠くで誰かが私を呼ぶ声が聞こえた。


自分の足を叱りつけて立ち上がりシリウスの加勢に行く。
シリウスの後ろにはハリーとネビルが居る。
台座の上でシリウスと向かい合っているのはベラトリックス・レストレンジ。
台座に登ろうとした私の前にルシウス・マルフォイが飛び出した。


「お前は、穢れた血だな」

「だったら何だって言うんですか?」


答えの変わりに赤い閃光が飛んでくる。
私の唱えた失神呪文とぶつかって爆発した。


「名前、ハリーとネビルを連れて逃げるんだ!」

「でもリーマス」

「ハリー達が大事だ!早く!」


グッと歯を噛み締めてハリーとネビルを支え階段まで連れて行く。
ネビルの足はバタバタと忙しなく動いている。
階段下まで来た時、直ぐ横を呪いが飛んでいった。
振り返るとベラトリックスがニヤリと笑っている。


「ハリー、ネビル、頑張るのよ」

「名前、行っちゃ駄目だ」


ハリー達に保護呪文を掛けて台座まで引き返す。
ちょうどシリウスがベラトリックスの閃光を避けた。


「名前下がってろ!」

「嫌よ!」


吠えるように言うシリウスが此方を向いた瞬間、ベラトリックスが動く。
私は精一杯力を込めて盾の呪文を心の中で叫んだ。
シリウスは吹っ飛んでそのまま壁にぶつかる。
ベラトリックスが勝ち誇ったように叫んだ。
心臓が嫌な速さでドクンドクンと動く。
駆け寄ってシリウスの手を握るとちゃんと脈があった。


「シリウス!」


声が響き、其方を向くとハリーがリーマスに押さえられている。
今ハリーが此方に来るのはとても危険だ。
ハリーから目を逸らし、周りに居る死喰い人と向き合う。
けれどその死喰い人はあっという間に何かに拘束された。


「ダンブルドア先生」


先生は無言で頷きまた別の死喰い人の元へ向かう。
私はその場にしゃがみ込んでシリウスの手を握った。
気絶しているだけでシリウスは生きている。
リーマスもトンクスもムーディ先生も。


キングズリーに目を向けるとベラトリックスが部屋を出て行くのが見えた。
後を追いかけるハリーはシリウスを傷付けた事で相当怒っている。


暫くして見た事のない二人が部屋に入ってきた。
その二人は死喰い人を見て盛大に顔を顰める。
リーマスがネビルと部屋を出て行くのが見えた。
ジタバタしていたネビルの足はもうすっかり元通り。
握った手に力を込めるとシリウスの瞼が僅かに動いた。


「シリウス?」

「…名前?」


打った頭か、それとも体か、痛みにシリウスが唸る。
けれど暫くすると虚ろだった目はハッキリとしてきた。
起き上がろうとするシリウスの背中を支える。


「ハリーは?」

「ダンブルドア先生が来て下さったの。きっと大丈夫よ」

「そうか」


立ち上がろうとしたけれどシリウスは唸っただけだった。
無理をしてはいけない、と伝えると苦い表情を浮かべる。
部屋全体を見回したシリウスの目が私の顔で止まった。


「名前、顔に傷作って…ビルに説教されるぞ」

「え?」

「気付いてねえのか?」


シリウスが伸ばした手が触れた所が痛みで悲鳴をあげる。
手で擦ってみるとどうやら結構出血したらしい。
痛いから擦るな、と笑ったシリウスは何故かいつもより大人に見えた。




(20130106)
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