「信じられない」
「そう怒るなよ名前」
「そうそう、俺達の新たな門出だぞ。応援してくれよ」
それぞれ荷物を片付ける二人は同じように笑う。
ハリーがグリモールド・プレイスの暖炉に現れた日の出来事を聞いた。
学校を抜け出して来たなんてモリーさんが聞いたらどう思うだろう。
ホグワーツから手紙は送られる筈だからもう知っている筈。
「そんなに俺達に試験受けて欲しかったのか?」
「違うわ。私が言ってるのはハリーの方よ」
「名前、俺達は頼まれただけだよ」
「そうさ。可愛い妹の頼みだ。断れる筈がない!」
自信満々に言い切ったフレッドに溜息を吐く。
確かにジニーがフレッドとジョージに頼んだ事だ。
ジニーはハリーが好きだから力になりたいと思ったのだろう。
そして提案に乗って実行に移したのは何よりハリー本人。
「…それで?モリーさんには知らせたの?」
「此処に来た日に知らせた」
「次の日には吠えメールだ」
二人が顔を見合わせて爆発する仕草をした。
それを眺めながらスープをテーブルに置く。
すると二人は動かしていた手を止めて真っ直ぐ此方へ来た。
「自炊出来るかと思ってたわ」
「まあ、なんとかなるさ」
「一人じゃないしな」
「俺もジョージもやれば出来るのさ。なんなら名前が一緒に住んでくれても良いけど」
「お断りします」
ニヤリと笑った二人にパンを差し出す。
二人が食べるのに夢中になると部屋は静かになる。
偶に外から人の話し声が聞こえてくる程度。
人の少ないダイアゴン横丁は静かだ。
「でも、時々様子は見に来てあげるわ」
「毎日でも良いぜ」
「残念。私にも任務はあるの」
「任務って?」
「危ない事?」
同じように首を傾げる二人の頭を撫でて部屋の窓を開ける。
教えてと後ろから聞こえるけれどそれは聞こえないフリ。
下を見ると通行人が物珍しそうに一階のお店を覗いていた。
まだオープンはしていない二人のお店は悪戯グッズで埋まっている。
「アンブリッジってそんなに酷いの?」
「最悪だな。ファッジが一番だと思ってる。俺とジョージとハリーはクィディッチを一生禁止だ」
「高等尋問官令なんて沢山あるぜ。尋問官親衛隊なんてのも居る」
「尋問官親衛隊?」
頷いたジョージが尋問官親衛隊の説明を始めた。
どうやらアンブリッジが直々に選んだグループらしく、その生徒は魔法省を支持しているらしい。
監督生も減点する権限を持っていてその殆どがスリザリンの生徒で結成されている。
まさかと思いながらもドラコの名前が出たところで頭を抱えたくなった。
「でもおかしいんだよ。そりゃアンブリッジの前では嫌みなやつだ。でもアンブリッジの居ないところでは大人しいんだ」
フレッドが首を傾げながら不思議だ、と繰り返す。
アンブリッジは魔法省の人間でその魔法省と繋がっているマルフォイさん。
ドラコの行動の意味が解って私は一気に嬉しくなった。
(20130106)
176