クリスマスが終わると再びシリウスの機嫌は急降下した。
そんな中スネイプ先生が現れた事でシリウスの機嫌はもう最悪。
一応何かあった時の為にと厨房の前で待っていると中からハリーの大声が聞こえてきた。
一度目は様子を見たけれど流石に二度目はジッとしていられない。
中に入るとハリーがシリウスとスネイプ先生の間で二人を止めようと必死だった。
二人とも杖をお互いに向けてこれ以上ないという顔で睨み合っている。
二人に向けて武装解除術をかけ、飛んできた二本の杖をキャッチした。
「何をする名字!」
「邪魔すんな名前!」
二人が怒りの矛先を杖を奪った私に向ける。
その形相に一瞬怯んでしまったけれど、今邪魔をしない訳にはいかない。
ハリーは必死で二人を引き離そうと必死になっている。
「治った!全快だ!」
陽気な声がして振り返るとウィーズリー家全員とハーマイオニーが居た。
今にも私に飛びかかりそうな雰囲気の二人にアーサーさんから笑いが消える。
サッと誰かが私の前に進み出たと思ったらビルだった。
「ポッター、月曜の夕方、六時だ。杖を返したまえ名字」
私の手から半ば奪い去るように杖を取ってスネイプ先生は去っていく。
シリウスはずっとその後ろ姿を睨みつけていた。
それぞれが動き出すと目の前のビルがくるりと振り返る。
その表情を見てこれはまずいと思った。
「名前、怪我は?」
「な、ないわ。大丈夫、ちょっと杖を奪っただけで」
「怪我してたらどうするつもりだったんだ」
いつもよりも少し厳しい口調のビルに私は素直に謝罪を口にする。
項垂れる私の頭を撫でたビルが仕方ないなという風に笑った。
すると後ろからシリウスが現れてビルと私を見て眉を寄せる。
「名前、杖返せ」
「あ、うん」
「…悪かった」
ボソッと呟いた言葉を残してシリウスは厨房を出て行った。
何があったのかは知らないけれどスネイプ先生との仲は相当悪いのだろう。
リーマスに聞いてみるのも良いかもしれない。
その日の夜はシリウスは変に元気で、皆を楽しませようとしている。
けれど相変わらずむっつりとする瞬間があって、ハリーはそれに気付いているようだった。
溜息を吐くとそれに気付いたフレッドが私に凭れかかる。
「名前、溜息吐いてどうしたんだ?俺と離れるのが寂しいとか?」
「それは…そうでもないわ」
「酷いなー」
「フレッドったら毎日のように手紙を送ってくるじゃない」
ニヤリと悪戯に笑ったフレッドは嬉しいだろ?と顔を覗き込む。
はいはい、と適当な返事をすると隣でビルの笑う声がした。
もう皆寝たんじゃないかという時間にノックされる。
誰か眠れなかったのだろうか、と扉を開くとジョージが立っていた。
話がある、と呟いたのでジョージを中に通す。
「何か、飲む?」
「要らない。話をしに来ただけだから」
「そう?」
ソファーに座るジョージの隣に座ると近くのブランケットを引き寄せる。
寒くないようにとジョージの膝に掛けようとしたその手を掴まれてそのまま引き寄せられた。
背中に回された腕は離さないと言っている。
「ねえ、そろそろ俺の事真剣に考えて」
「ジョージ」
「ビルの事好きなのは解ってるよ。でも俺は名前の弟になるつもりなんかないからな」
「…解ったわ。ちゃんと、ジョージの事真剣に考える」
「本当に?約束だよ?」
頷いた私をギュッと抱き締めてジョージは部屋を出て行った。
閉められた扉から視線を移すと写真立ての中でビルが笑っている。
(20130101)
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