仕事に向かうビルと入れ違いになるようにモリーさん達がお見舞いに来た。
モリーさんは私を抱き締めてからアーサーさんの頬にキスをする。
邪魔をしないように、と病室から出るとトンクスとムーディ先生が居た。
トンクスは私を見ると思い切り抱き締めて小さく名前を呼ぶ。
「名前、貴女顔色が悪いわ。アーサーは大丈夫だから帰って休むべきよ」
「大丈夫よ」
「名前が無理するとビルが怒るのよ。モリーもね。だから帰って休みなさい」
トンクスの言葉に苦笑いして頷いた。
トンクスとムーディ先生と三人でまたアーサーさんの病室へ入る。
今度は騎士団とアーサーさんを襲った蛇の話とハリーの事。
とてもじゃないけれどロン達には聞かせたくない。
ハリーもきっと知られたくないだろう。
グリモールド・プレイスに戻るとハリーは真っ先に部屋に上って行った。
一人になりたいだろうし、何より心配したモリーさんの言葉もある。
それを見送って半ばぼんやりする頭でモリーさんの手伝いをしようとしたらやんわりと断られてしまった。
私も少し眠るべきだと言い張ったモリーさんに素直に従う。
確かに私も色々な事があって体が疲れている自覚は充分にあった。
着替える事もなくベッドに横たわっているとノックの音が聞こえてくる。
首だけで其方を向くとひょっこりとジョージの顔が覗いていた。
何か言う訳でもなく此方をジッと見つめている。
「どうぞ」
体を起こしてベッドに座ると無言で入ってきたジョージもベッドに座った。
どうしたの、と尋ねようと口を開いたけれど声にはならない。
伸びてきた腕に引き寄せられるままにジョージに抱き締められる。
まるで縋り付くように回された腕と肩に埋められた頭。
「ジョージ?」
「…少しだけで良い。こうさせて」
珍しい、気弱な小さい声は辛うじて聞き取れた。
腕を伸ばして頭を撫で、反対の腕で背中を撫でる。
暫くそうしていたけれど不意に腕が離れていく。
肩に埋まっている頭だけはそのままに手を握られた。
名前を呼んでみるもその頭が上がる事はない。
「…名前、見てたのか?」
「ん?」
「俺が、マルフォイを殴るところ」
「見てたわ」
「…失望した?」
ゆっくり離れていった頭が上がり、見えたのは不安そうな表情。
頭を撫でようと思ったけれど両手は握られている。
代わりに握られている両手に力を込めた。
「失望なんかしないわ。挑発するドラコも悪いもの」
手の力が緩んだので赤毛を撫でると再びジョージの頭が肩に埋まった。
良かった、と本当に小さな声で呟いたのが聞こえる。
「暴力は良くないけどね」
「…反省は、してるつもりだよ」
「唇はもう治ったみたいね」
「バッチリさ。キスも出来る。試してみる?」
頭を上げてニヤリと笑ってそう言うジョージの額を突ついた。
(20121229)
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