ホグズミードに用事があって、ついでにスネイプ先生の所に行こうと思ったら賑やかな声が聞こえてきた。
だから懐かしさとほんの少しの期待を込めてこっそりグリフィンドールの観客席に忍び込むと見えたのは赤と緑。
なんとグリフィンドールのキーパーはロンでスリザリンのビーターはクラッブとゴイルだった。
そしてスリザリンの観客席から聞こえてきたのは恐らくロンをからかっているような歌詞。
試合が終わったと思ったのに今度はハリーとジョージがドラコに殴りかかるという出来事が起こった。
頭を抱えたくなりながら皆に気付かれる前に競技場を出る。
ほぼ同じタイミングで出て来たハリーとジョージと出会った。
二人とも何も言わなかったけれど目は真ん丸くなっている。
ジョージと目が合うとその顔がくしゃりと歪む。
その唇は腫れ上がっている。
声を掛けようかとも思ったけれど、それより前に歩き出してしまった。
「名字!どうして此処に…でも丁度良いです。手伝って貰えますか?」
マダム・ポンフリーに声を掛けられ、頷いて一緒に医務室に向かう。
ドラコはマダム・ポンフリーの後ろで俯いている。
言われるままに手伝いをしていたらスネイプ先生が医務室に入ってきた。
私を見ると眉間の皺がより一層深くなったような気がする。
「マルフォイの怪我は?」
「大した事はありません。治療が終われば寮へ帰しても良いでしょう」
スネイプ先生とマダム・ポンフリーの会話を聞きながらドラコの血を拭く。
薄い青色の瞳は伏せられていて目が合う事もない。
頬の痣を撫でるとドラコの体がピクリと反応した。
「…して、君は何故此処に居るのかね?」
「先生にお会いしようと思いまして」
「ああ、例の手紙かね。帰る前に研究室に寄りたまえ」
そう言うとスネイプ先生はマントを翻して立ち去る。
目の前のドラコに向き直ると薄い青色の瞳が此方を見ていた。
しかし直ぐに逸らされて、向けられた横顔には痣。
腕を伸ばして痣に軽く、決して押したりしないように表面をなぞる。
「…僕は、お前の望むようにはなれない」
「ドラコ、またハリーやフレッド、ジョージを挑発したの?あの歌も貴方?」
無言でドラコは頷いてそのまま俯いてしまった。
腕を伸ばしてプラチナ・ブロンドを撫でる。
試合の後だからか少しだけ乱れたそれに指を通す。
窓から入る光に当たってキラキラと光る。
「勿体ないわ。ドラコは本当は優しくて良い子なのに。そんな幼稚な真似をしない方が素敵よ」
「…お前は、そうすれば僕を見るのか?」
「あら、今でも私はドラコを見てるわよ?変な子ね」
「そうじゃ…いや、そうか」
やっと薄い青色の瞳が此方を真っ直ぐ見つめてふわりと微笑んだ。
やっぱりこっちのドラコの方が魅力的だと思う。
寮まで戻るドラコに付き添った帰り、スネイプ先生の研究室にも寄った。
あっさりと渡された羊皮紙には材料と手順が書き込まれていて何種類も書かれている。
お礼を言った時に片眉を上げて構わんと言った表情は少し意外だった。
ハリー達の事も気になって居るけれどきっと会う事は難しいだろう。
私はもう卒業した身で今は部外者だから談話室にも入れない。
帰ろう、と足を動かし始めた時後ろから甲高い声が聞こえてきた。
振り返ると全身ピンクで顔中に貼り付けたような笑顔をした人が立っている。
「貴女、生徒じゃないように見えますわ」
「…卒業生です」
「あらあら…卒業生が何の用なのかしら?」
直ぐにこの人が例の高等尋問官なのだと解った。
魔法省の人間で、闇の魔術に対する防衛術の教師。
「スネイプ先生にお会いする用事があったので。でももう帰ります」
なるべく早く離れようと早口で告げてその場を離れる。
彼女は何も言わず、けれどそこを動こうとはしなかった。
(20121229)
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