グリモールド・プレイスに戻ると厨房でビルとリーマスが小鬼の話をしていた。
シリウスは珍しく何かを作っているらしく鍋をかき混ぜている。
私に気付いたビルとリーマスからお帰りと声を掛けられてやっとシリウスは振り向く。
ただいま、と呟いた声は自分では上手く聞き取れなかった。


「どうしたんだい?気分でも悪い?何か薬でも」

「あ、大丈夫だよリーマス。私、あの…ちょっと疲れちゃって。着替えてくる」


答えを聞かずに厨房から出ると相変わらず玄関ホールは真っ暗。
深く溜息を吐いて自分の部屋まで戻るとソファーに倒れ込む。
全く想像していなかった訳ではなかったのだ。
けれど、やはり自分の目や耳で見聞きするのは違う。
パーシーの無表情な顔と冷たい声を思い出すだけで気分が落ち込む。


のろのろとローブを脱いで近くにあるセーターを被る。
腕を通していると扉がノックされた。
返事の後に開いた扉から現れたのはビル。


「名前、パースに何か言われた?」

「言われた内容は、ハリーとダンブルドア先生が嘘吐きだって、二人を信じるのかって」


隣にビルが座った事でソファーが少しだけ沈む。
落ち込んだ気持ちを誤魔化すように手をギュッと握ると横から伸びてきたビルの手に解かれた。
そのまま手を握られて見上げるとビルは微笑んで一回だけ小さく頷く。


「冷たい声だったわ。無表情で…パーシーじゃないみたいだった。話したかった事も話せなかったの」

「そっか…仕方ないね、パースは」


昔のパーシーみたい、とポツリと呟くと握られている手に力が入った。
バサバサという音がしてチェシャーが飛んでくる。
私の指を甘噛みして少し怒ったように嘴をカチカチと鳴らす。


「落ち込むなって事?」

「きっとそうだよ。チェシャーも名前が好きなんだよ」

「相変わらずビルの方に懐いてるけど」


ビルがクスクス笑い出したのを見て私も笑顔になれる。
もう大丈夫だという意味を込めて一度手に力を込めてから離す。
するとその手が私の頭を撫でた。


「私諦めない。いつかパーシーにお説教するんだから」

「僕も付き合うよ」


きっとパーシーは解ってくれる筈。


二人で厨房に降りていくとシリウスが作っていたスープで夕食になった。
リーマスは何か言いたそうにシリウスをチラチラ見ていたけれど、スープは美味しい。
とすると何か別の事かもしれないけれど、触れない方が得策だろう。
そのせいか食べ終わると真っ先にシリウスは部屋を出て行った。


ビルの帰った後の暖炉をぼんやり眺めていたら厨房の扉が開き、シリウスが入って来る。


「どうしたの?」

「あー…ワイン飲むか?」


瓶を軽く持ち上げて言ったシリウスに首を緩く横に振った。
すると明らかにがっかりした顔をする。
その顔のまま向かい側にどかりと腰を下ろす。
ワイングラスに注いでシリウスはそれを一気に飲み干した。


「リーマスに怒られるわよ」

「良いんだよ、別に」

「そう?」

「…そんなにビルが好きか?」


暖炉からシリウスに目を移すと、その顔は思いの外真剣な表情。
曖昧に笑い返して頷くとシリウスからは興味なさそうな返事が返ってきた。
自分から話を振った癖に変な人だと思う。
ワインの瓶を奪って彼のワイングラスに注ぐ。


「ビルは勿論好きだけど、ウィーズリー家の人は皆好きよ」

「あいつもか?パーシー」

「勿論。パーシーは本当は優しいのよ」


シリウスはそれに返事もせずにワインを飲み干した。




(20121229)
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