いつものように朝食を作ってシリウスと並んで食べていると新聞が届いた。
それと同時に私の方が先だと言わんばかりにチェシャーが飛び込んで来る。
代金を支払ってチェシャーの手紙を外しているとシリウスの手からトーストが落ちた。


「シリウス?」


呼び掛けても何も答えずシリウスは新聞の文字を追う。
何が書いてあるのかと待ちながらチェシャーにベーコンの皮を差し出す。
チェシャーが持ってきた手紙はドラコからだった。
ドラコの手紙は課題で良い評価を貰った、実技が上手くいった等の内容。
いつもいつもその手紙を読むのは密かな楽しみだったりもする。
呪文学で点数を貰ったという文章を読んでいるとその上に新聞が差し込まれた。


「高等尋問官?」

「読んでみろ」


シリウスに言われてタイトルから記事の内容へと文字を追う。
文章に出てきたパーシーとルシウス・マルフォイの名前と内容に頭を抱えた。
彼女が魔法省の人間だという事は知っていたけれど、この為だったのか。


「シリウス、魔法省って簡単に入れる?」

「そりゃあ入れるけど…何するつもりだ?」

「パーシーに会いたいの」

「簡単には会えないな。確かファッジの補佐官だろ?門前払いされるんじゃないか?」

「偶然会えてもきっと同じよね。その場にルシウス・マルフォイが居たら厄介だし」

「一人暮らししてるんだろ?家が解ればな」


そう言ってシリウスは落としたトーストを拾った。




夕方を選んで来たのだけど、居るかどうか解らない。
梟を送れば良かったと思うけれど今更だろう。
意を決して玄関をノックすると中からモリーさんの声がした。


「まあ名前!いらっしゃい。よく来てくれたわ」

「こんばんは。あの、ビルは居ますか?」

「まだ帰って来てないわ。でもそうね、そのうち帰るだろうから待っていたら良いわ。夕食も食べていって?」


モリーさんは快く私を迎えていそいそと紅茶を淹れてくれた。
何回も隠れ穴は来た事があるけれど、こんなに静かな隠れ穴は初めて。
皆ホグワーツに居るし、ビルとアーサーさんは仕事に出掛けている。
パーシーは、今は隠れ穴には居ない。


「向こうで困っている事はない?」

「大丈夫です。リーマスも居ますし」

「でもリーマスは任務で家を空ける事も多いでしょう?そうなるとシリウスと二人きりになるわ。確かに騎士団本部だけど、貴女は女の子なんだもの」


返事をする代わりに苦笑いを返す。
モリーさんは相変わらずシリウスを良く思っていない。
二人ともハリーを想う気持ちは同じなのだけど。


「ビルの事が好きなんでしょ?貴女だったらビルの方が合ってると思うわ」


モリーさんの言葉に飲みかけていた紅茶で思い切り噎せてしまって咳き込む。
ビルの事をモリーさんが知っているなんて思わなかった。
ハーマイオニーがバレバレと言っていたから可笑しくはないのだけど。
それでもこう言われてしまうと何とも言えない苦い気持ちになる。


「あら、ビルが帰ってくるわ」


モリーさんの言葉に時計を見ると確かにビルの針が移動中になっていた。
間もなく扉が開いてビルが入ってくる。
私を見て驚いた顔をしながらモリーさんを抱き締めた。
夕食の為鍋へ向かうモリーさんを見ながらビルが私の隣に座る。


「お帰りなさい、ビル」

「ただいま。遊びに来てたの?」

「ちょっとビルに聞きたい事があって」

「聞きたい事?」


ビルは続きを促すように首を傾げた。
けれど、内容が内容だけに此処で話す訳にはいかない。
モリーさんを確認してから小声でパーシーと伝えた。


「解った。後で聞くよ」


モリーさんに聞かれないように、とこれも小声で付け足す。




(20121224)
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