二月十四日の朝、何故か談話室でにこやかにパーシーが迎えてくれた。
「おはよう名前」
「おはようパーシー。どうしたの?」
「これを君に渡そうと思って」
差し出されたのは四角い包みで首を傾げる。
開けてみてと笑顔で言われて包みを開くとこの間パーシーが読んでいた本が入っていた。
パーシーを見ると嬉しそうに笑ってそれじゃあ、と去っていく。
一人残された私はこの本をどうしようかと考える。
とりあえず鞄に入れて私は授業へと向かった。
「やあ、名前」
「ビル」
「やっぱり此処だった」
本棚から顔を出したビルは向かい側に座って本を開く。
何か用事があるのかと教科書を閉じようとしたらそれを止められる。
「レポート書き終わるまで待ってるから」
微笑んでビルは本に目を戻した。
私はなるべく待たせないように教科書を捲る。
書き終わるとビルが杖を振ってあっという間に乾かしてくれた。
図書館から出るとあちこちで上級生がウロウロしている。
「皆告白しようとしてるのかしら」
「かもしれないね。そんなイベントじゃないんだけどね」
チラリとビルを見ると私はこっそり溜息を吐く。
告白という言葉について深く考えが落ちる前に振り払う。
不意に立ち止まったビルを振り返るとビルは包みを差し出していた。
「開けて良い?」
「勿論」
受け取って私はやっぱり丁寧に包みを開いていく。
中から出てきたのは可愛らしい小物入れだった。
一緒にカードが入っていてイニシャルでWとCの文字が書いてある。
「チャーリーと二人で選んだんだよ」
「有難う。凄く嬉しい」
「良かった。名前には渡そうって話してたんだ。パースは一人で選んだみたいだけど」
今朝渡された本を思い出してあれはそういう意味だったのかと納得した。
尤も、その本は一度も開かれず鞄の中に入ったままなのだけれど。
大広間に向かって歩きながら本の話をするとビルは何とも言えない表情を浮かべた。
(20120702)
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