翌朝起きて厨房に行くと屋敷しもべ妖精と出会った。
私を見るなりブツブツ呟き始め、血を裏切るという言葉が聞き取れる。
どうやらブラック家は屋敷しもべ妖精まで純血主義らしい。
敢えて何も声を掛けず見ているとそのまま部屋の外へと出て行く。
屋敷しもべ妖精と擦れ違うように欠伸をしながらリーマスが入ってきた。
「やあ、おはよう名前」
「おはよう、リーマス」
因みに丁寧に話す必要はないよ、と笑顔で言われたのは昨日の夜。
なるべくリーマスには逆らわないと決めた私は素直に頷いた。
リーマスは私の前まで来て立ち止まるとジーッと私を見つめてくる。
「リーマス?」
「元気そうだね」
「え?」
「もしかしたら名前が落ち込んでいるかも、とビルが帰る時に言っていたんだけど」
大丈夫みたいだね、とふんわり笑うリーマスに私は苦笑いを返す。
落ち込んでいる訳ではなかったけれど楽しい気分じゃないのは確かだ。
予想通りの答えだったからかダメージは案外少ない。
「朝食を用意しなければね。本当はシリウスが一番に起きてきて作ってるのが一番なんだけど」
「私も手伝う」
リーマスと二人でトーストを焼いてオニオンスープを作る。
ベーコンを焼きながらホグワーツや隠れ穴の事を思い出す。
ホグワーツでは屋敷しもべ妖精が、隠れ穴ではモリーさんが作ってくれていた。
モリーさんの手伝いはしていたけれど盛り付けたり紅茶を淹れたりする程度。
こんな風にちゃんと作るのはホグワーツ入学前以来かもしれない。
二人分の朝食を並べてリーマスが淹れてくれた紅茶を添えて完成だ。
リーマスと向かい合って食べるのはまだ慣れない。
トーストをかじりながらリーマスを見ているとやはり砂糖の数は少し多い気がした。
「リーマス、私ね」
「うん?」
「ビルに振られたの」
「ああ…それで」
「でも、そんなにショックじゃないというか、やっぱりって思って」
食べる手は止めずに話す私に紅茶を片手に聞くリーマス。
複雑な心を表す言葉を探しながらトーストをかじる。
「ビルが好きで大事なのは変わらないなぁって思ったの」
「そっか」
なんだかリーマスに話した事で思った以上にスッキリした。
多分普通なら落ち込んで泣き明かすのだろうけれど私は違う。
案外ビルを好きじゃないんじゃ?とも思ったけれどそんな筈はない。
今尚好きだと想う気持ちは紛れもなく本物。
「聞いてくれて有難う」
「どう致しまして」
「おはよう。何の話だ?あ、美味そう」
「私の朝食に手を出すつもりかい、シリウス」
シリウスが伸ばした手をピシャリと叩いてリーマスはにっこりと笑った。
文句を言いながらも自分の朝食を用意し始めるシリウス。
やっぱり私にはシリウスとリーマスがが同い年だなんて思えない。
(20121210)
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