皆がダンスパーティーに出掛けた談話室はとても静かだ。
窓際にあるソファーに座ってビルから貰ったスノードームを見つめる。
最後まで誘ってくれたジョージはシャロンと出掛けた。
不満そうなジョージの顔が思い浮かぶ。
クリスマスプレゼントはシリウスからも来ていた。
入っていた手紙にホグズミードに居ると書いてある。
ハリーが心配だからと自分の事を後回しにしたらしい。
あの人は自らの事をしっかり考えているのだろうか。
スノードームを一度ひっくり返してから再び机に置く。
キラキラ光るそれはとても綺麗でブックマーカーのようだ。
腕時計が目に入ってビルから貰った物が多い事に気付く。
色んな物を貰って色んな物を送っている。
それはきっととても幸せな事なのだ。
「ビルに、会いたい」
呟いても返事がなくて談話室に響いて消えていく。
ビルから貰ったブランケットをぎゅっと抱き締める。
「名前」
ピクリと私の肩が意思に反して動いた。
振り向くより先に伸びてきた腕に捕らえられる。
この声は聞き間違える事のない声。
「どうして、此処に居るの?」
「抜け出して来た」
「駄目じゃない、シャロンを置いてきたら」
後ろで笑う気配がして肩に頭が乗せられた。
後ろから抱き付かれているからどんな表情かは解らない。
さっきまでビルの事を考えていた私は情けない顔だと思う。
机の上のシリウスからの手紙とかチャーリーからのカードとか、片付けなければと思いながら動かない。
特にシリウスからの手紙なんてハリーには秘密だと言われているのに。
「そんなにビルに会いたい?」
「…聞いてたの?」
「うん」
「それなら、ジョージは意地悪ね。それを聞くなんて」
零れた苦笑いをそのままにスノードームを見る。
スノードームの中の雪はすっかり止んでいた。
ジョージが移動して隣に座るとソファーが揺れる。
手紙やカードを杖を振ってその場から消す。
するとその手を掴まれてしまった。
「ジョージ」
ジョージがそのまま体重を掛けてくる。
耐えきれずに倒れ込んだ私をジョージが上から見下ろす。
いつもの飄々とした態度は全くなく感情が読み取れない。
唇が私の名前を呼ぶように動いた。
「ジョージ、辞めて」
「名前、俺の事も見てよ」
顔を近付けようとしたジョージの喉元に杖を向ける。
本当はジョージ相手にこんな事したくないのだ。
真っ直ぐ私を見ていた顔がくしゃりと歪む。
杖を退けるとジョージがそのまま倒れ込んで来た。
ソファーに顔を埋めるようにしたジョージの頭を撫でる。
「俺名前が好きだよ」
「うん…有難う」
応えられないからお礼を言う事しか出来ない。
ジョージの気持ちが真っ直ぐで胸が痛い。
まるでビルに片想いをする自分を見ているようで。
(20121205)
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