クリスマス休暇は殆どビルとチェスをして過ごし、新学期前日に皆が帰ってきた。
チャーリーとパーシーが談話室に入って来た時私はビルとチェスをしていて、チャーリーが座ってそれを眺めている。
「へぇ、名前強いな」
「だろ?真剣勝負したら負けるかも」
「ビル負けるんじゃない?」
「駄目よ。いつもビルったら負けそうになると本気になるんだもん」
ビルは涼しい顔をしたままだし、チャーリーは笑い出す。
その時パーシーがやってきてビルの隣に座った。
休暇前に見た時と同じ顰めっ面。
どうした、とビルが聞いている間チャーリーが私の隣に座って小声で話し出した。
「パースはビルが居なくて寂しかったんだよ。それをフレッドとジョージにからかわれてね」
「悪戯っ子の弟ね?」
「そうさ。あの二人はよくパースをからかってるんだ」
やっぱり前に私が考えた事は当たっていたらしい。
ビルはパーシーの機嫌を直したらしく、もう顰めっ面では無かった。
パーシーが部屋へ登っていくのにビルが着いていき、チェスは一時中断になる。
「名前、どうだった?ビルと何かあったか?」
「それ私も聞きたいわ!」
ドン、と軽い衝撃が加わった方を見るとシャロンが座っていた。
いつの間にか部屋から戻っていたらしく、私に抱きついている。
そしてチャーリーと一緒になって何かあったのかと問い詰め始めた。
二人が黙ったと思ったら、ジーッと此方を見つめ続けている。
「あの、特に…何があったって訳じゃないの。チェスを教えて貰ったり、勉強を教えて貰ったり」
そこまで言って、クリスマスの事を思い出す。
思い出してしまうと顔に熱が集まっていくような気がした。
当然その変化に気付いたシャロンとチャーリーはニコニコし出す。
「何かあったんだな?」
「名前、何があったの?」
「あ、あの…クリスマスに一緒に踊ったの」
段々小さくなる声だったけれど二人には届いたらしい。
シャロンは素敵!と言って再び抱きついて、チャーリーは良かったなと私の頭を撫でた。
小さな声で頷くとチャーリーが優しく笑う。
次の日から授業が始まってクリスマスの雰囲気は全く無かった。
魔法史の授業ではビルに寝ないコツを教えて貰ってノートはバッチリ。
欠伸をしているシャロンが不思議な顔をしている。
「絶対無理だわ。起きていられない」
「ノートは無理そうね」
「名前が頼りよ!」
シャロンと大広間に入るとパーシーが教科書を開いたままソーセージをかじっていた。
迷わず隣に座るとパーシーは挨拶をして顔をまた教科書に戻す。
チラリと本を覗き込むとホグワーツの監督生に関する内容だった。
「パーシーは、監督生になりたいの?」
「勿論さ!ビルもチャーリーも監督生だからね。僕が監督生になったらお父さんお母さんがどんなに喜ばれるか!」
どうやらパーシーのスイッチを押してしまったらしく饒舌に語り出す。
チラリと向かい側に座ったシャロンを見ると苦々しく笑っていた。
適当に相槌を打ちながら私はマフィンを引き寄せてかじる。
相変わらず美味しいなぁと思っていたらいきなり聞いてるかとパーシーに詰め寄られた。
「聞いてる、聞いてるわパーシー」
「そういえば名前も優秀だと噂を聞いているよ。グリフィンドールの点数を稼いでいるらしいね」
「そんな事無いわ」
「あるわよ。名前、勉強熱心じゃない」
どうやら共通の話題を見つけたらしくパーシーとシャロンは盛り上がり始める。
自分の事で盛り上がっているのを聞くのはなんとも奇妙な気分だ。
口を挟まずパーシーが開きっぱなしになっている教科書を覗き込む。
「名前、そんな本読むのか?」
「ハイ、チャーリー。これはパーシーのよ」
向かい側に座ったチャーリーは納得した顔をしてパーシーを見る。
パーシーは今度はシャロンに監督生の素晴らしさを語っていた。
「パースは野心家だからな」
「監督生ってどうやって選ばれるの?」
「手紙にバッジが入ってるのさ」
「あぁ、ビルとチャーリーがしているバッジね」
チャーリーは二つ付けているバッジの一つを外して渡してくれる。
もう一つはクィディッチのキャプテンのバッジだ。
私は監督生バッジを観察してチャーリーに返す。
「名前は監督生に選ばれるかもしれないな」
「そうかしら?」
「少なくともパースはそう思ってるみたいだぜ」
パーシーはちょうど私が監督生に選ばれる筈だ、と断言してシャロンの顔は顰めっ面。
私はチャーリーに肩を竦めて見せて、チャーリーは苦々しく笑った。
(20120628)
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