久しぶりに授業に関係ない本を捲っていると誰かが隣に座った。
本から目を上げるとそこには困った顔のハリー。
珍しいなぁと思って声を掛けても返事が無い。
何か言おうとしては口を閉じる、というのを繰り返す。


「ハリー、どうしたの?」

「うん…あの、名前、ダンスパーティー行く気ないって聞いたけど、今もない?」

「どうして?」


またハリーは言い倦ねているようだった。
ブックマーカーを挟んで本を閉じてしっかりハリーに向き直る。


「僕、まだパートナー居なくて…名前さえ良かったら」

「あらハリー、自分より背の高い子は誘わないんじゃなかったの?」


悪戯っぽく言うとハリーの目が丸くなった後知ってたの、と小声で呟いた。
気まずそうに目線を彷徨わせているハリーのくしゃくしゃの頭を撫でる。


「ハリーならきっとパートナーが見つかるわ」

「…だと良いけど」

「力になれなくてごめんね」

「大丈夫。僕こそ、邪魔しちゃってごめんね」


ひらひらと手を振ってハリーがロンの所へ戻って行く。
入れ替わるようにジョージが隣に座った。
呪文学の教室でのシャロンの言葉が頭を過ぎる。


「名前、マルフォイから誘われたって本当?」

「うん、本当」

「返事は?」

「断ったわよ」


私の言葉にジョージがホッと息を吐いた。
ドラコが誘ってくれた事を知っているのは私とシャロン。
私は言っていないからシャロンが教えたのだろう。
ジョージの反応から察すると答えは言わずに。


「じゃあさ、名前俺と行こうよ」

「あー…あのねジョージ、私ダンスパーティーは行かないの。だから他の子と行って?」

「行かないの?」

「うん」


無言で俯いてしまったジョージに私も俯く。
ジョージと行くのが嫌な訳ではない。
あの日ホグズミードでジョージが言った通り弟みたいに思っている相手。
伸びてきた手が私の手を包み込んで力を込めた。
顔を上げると、思いの外真剣な瞳が此方を見つめている。


「俺は名前と行きたい」

「ごめんね」

「…そっか、解った」


ことん、と私の肩に頭を乗せたジョージはそれきり無言だった。




図書館で課題をやる私の隣に座るのなんてドラコ位しか居なかったのに。
信じられない気持ちで此方を見つめるジョージを見つめ返す。
普段殆ど近寄らないのに、どうして図書館に居るのだろう。
しかも手には正装のドレスが載っているカタログを持っている。


「いつもそんな集中してるのか?声掛けたのに」

「うん、まあね」

「俺、これが良い。グリフィンドールっぽいだろ?」


赤色のドレスを指差してにっこり笑うジョージ。
これは、一体なんと答えれば良いのだろう。
ドレスは勿論女性用でジョージが着るとは思えない。
大体背の高いジョージが着たら迫力満点だろう。
けれどジョージなら女装してフレッドと行く位するかもしれない。
しかしフレッドは嬉しそうにアンジェリーナと行くと報告して来た。


「ジョージが着るの?」

「まさか。名前だよ。今から頼んだら間に合うだろ」

「名前には赤より緑の方が似合うと思うが、ウィーズリー」

「マルフォイ」


苛々とした様子で腕を組んで立つドラコ。
ドラコを見た瞬間ジョージの目が細くなった。
ドラコもドラコでジョージを真っ直ぐ睨みつける。
図書館なので静かにして欲しいのだけど。


「名前に近寄るなよ、ケナガイタチくん」

「黙れウィーズリー」

「良い毛並みらしいな。流石名家のお坊ちゃんだ」

「言っておくが、名前から近寄ってくるんだ」

「二人とも喧嘩するなら出てって。そうじゃないなら、大人しく椅子に座りなさい」


杖を振ると二人の足が勝手に動いてそれぞれ椅子に座る。
私が一つ席をズレて右にジョージ、左にドラコだ。
お互い睨み合っていたけれど、大人しく本を読む事を選んだらしい。




(20121205)
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