12月に入ると変身術でマクゴナガル先生がダンスパーティーの話をした。
そうなると学校中が騒がしくなり、あちこちで女子グループが出来上がる。
元々集団で移動しない私でさえあちこち引っ張り込まれそうになって歩くのが大変だった。
只でさえ普段の授業の移動が大変なのに。


目の前で緊張した顔をしているレイブンクローの三年生。
昨日はハッフルパフの四年生と七年生が二人だった。
とにかく一人かシャロンの二人で行動する私は狙いやすいらしい。
今日はこの子で五人目だった。


「あの、ごめんなさい。私貴方のパートナーにはなれないわ」

「…そうですか。お時間戴いてすみませんでした」


ペコリと礼儀正しく頭を下げて去っていく男の子に申し訳なくなる。
彼自身は礼儀正しくてとても良い子なのだけど。
溜息を吐いて歩き出すとまた何処かから名前を呼ばれた。


「あら、ドラコじゃない。授業は?」

「呪文学が終わったところだ」

「そう。私はこれから呪文学なの」


確かに少し離れた所に四年生の集団が見える。
ドラコ一人という事はあの集団から抜け出して来たのだろう。


「パートナーは見つかったか?」

「いいえ。でも」

「じゃあ、僕と行かないか?」

「…え?」


驚きでまじまじとドラコを見つめてしまう。
まさかドラコに誘われるなんて思ってもいなかった。
嬉しいのだけれど、私は彼の誘いは受けられない。


「もしかして、誘われたいやつでも居るのか?」

「あ、うん。それは、ホグワーツには居ないんだけど…ごめんね、私ダンスパーティーに行くつもりはないの。誘ってくれたのはとても嬉しいわ」

「…あいつか」

「え?」

「何でもない。行かないのか、残念だ。気が変わったら言ってくれ」


そう言い残してドラコは四年生の集団へと戻っていく。
後ろ姿を見送っていると体に衝撃が走った。
誰かなんて確認しなくても解るのはやはり六年間の付き合いだろうか。


「マルフォイったら私の名前に申し込むなんて百年早いわ!」

「あら、百年後なら良いの?」

「駄目に決まってるじゃない。ビルにだってあげるの勿体無いんだから」


シャロンを宥めながら教室に入るとまだ誰も居なかった。
いつもの席に座るとシャロンが教科書を出しながらあーとかうーとか唸り出す。
これはシャロンが言葉を探している時の癖だ。
結局は真っ直ぐな言葉が飛び出すのだけど。


「名前、ダンスパーティーに行かないの?」

「うん」

「どうして?」

「…ビル以外とは、踊りたくないの」

「だろうとは思ったけど」

「あのね、今まで黙ってたんだけど」


一年生の時、あの不思議な部屋でビルと踊った事を打ち明ける。
すると予想通りシャロンはニヤニヤし始めた。
ビルを好きな間はダンスの思い出はあれだけで良い。
だから行かないのだと言えばまたシャロンは唸り出した。


「ジョージは、名前を誘うんじゃない?」

「あー…そうね。そうかもしれない」

「でも行く気がないの?」


無言で頷いた時他の生徒が入ってきたので会話を打ち切る。
シャロンは何か言いたそうな顔をしているけれど結局辞めたらしい。




(20121205)
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