「ハリー」
「ああ、うん」
「ハリー?」
目の前で手を振ってみると緑色の瞳が此方を向いた。
極度の緊張状態だという事が解る。
「あ、名前」
「ハリー、ハーマイオニーから聞いたわ。きっと大丈夫よ」
「うん…そうだと良いんだけど」
その時マクゴナガル先生がやってきてハリーを連れて行く。
ハーマイオニーがハリーを励ましているのが聞こえるけれど緊張は解れないようだ。
シャロンと競技場に歩いて行く列に加わる。
シャロンはドラゴンが見られるという事でテンションが高い。
しっかり捕まえていなければ多分何処かに行ってしまうだろう。
競技場の近くまで行くと見覚えのある赤毛が見えた。
「名前!シャロン!」
「チャーリー!」
「何で居るのよ?」
「ドラゴンと言ったら俺だろ?」
ニッと笑ったけれどチャーリーの顔は引きつっている。
ハーマイオニーから聞いた話が本当ならそうなるだろう。
シャロンが思い切り抱きつくのを見ながら近付く。
「ハリーの様子は?」
「かなり緊張してるみたいだけど、ハーマイオニーが言うには作戦はあるみたい」
「そうか…いざという時は俺達が居るから大丈夫だとは思うんだけどな」
「チャーリー、私近くで見ちゃ駄目かしら?」
「シャロンはドラゴンが見たいんだろ?後で見せてやるから名前と客席行け」
ポンポンと頭を撫でられたシャロンはすっかり拗ねている。
チャーリーが苦笑いを浮かべているのが更に気に入らないらしい。
シャロンを引っ張りながらチャーリーに手を振って客席へと向かう。
ドラゴンが飛ぶ度に隣で興奮するシャロンを押さえながらもドキドキしっ放しだった。
セドリックが火傷を負って客席から悲鳴が上がる。
多分此処数日で増えに増えたセドリックのファンだろう。
ハリーが終わった時には心の底から安心して無気力だった。
得点を見届けるとシャロンが走り出していく。
きっとチャーリー達の元へ行くのだろう。
私もゆっくり歩いてシャロンを追い掛ける。
けれど二人にした方が良いのだろうか。
考え事をしながら歩くものじゃないと毎回思うのだけどついやってしまう。
ドン、と音がして倒れるかと思ったけれど伸びてきた腕が支えてくれた。
「ドラコ?」
「大丈夫か?何か考え事か?」
「う、うん。ごめんね。助けてくれて有難う。またね」
ドラコの後ろでパンジー・パーキンソンが睨みつけている。
慌てて退散する私を不思議そうな顔で見ていたけれど彼女とは絡みたくない。
大体、私はドラコの事をそういう風に見ていないのに。
「ああ、生まれが関係してるのね」
「何が関係してるって?」
思わず零れた言葉に返事があって振り返るとチャーリーが居た。
城の方から歩いてきたチャーリーは手ぶら。
首を傾げるとモリーさんに梟を送ったらしい。
「あ、チャーリー、これ使ってみて」
「また作ったのか?無理するなよ」
「うん。私ビルとの約束はちゃんと守るわ」
「まあ、そうだな」
ニヤリと笑ったチャーリーにシャロンをお願いして城へと戻る。
ビルとハリーが書くかもしれないけれどシリウスにも手紙を書こう。
それからハリーとセドリックにお疲れ様と言わなければ。
(20121205)
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