まるで二年前のようだと思わざるをえなかった。
皆してハリーが自分で名前を入れたと思っている。
唯一グリフィンドール生だけはハリーが代表選手だと喜んでいるのがまだ救いだろうか。
スリザリンは元からだけれど今やハッフルパフもレイブンクローも敵のようだ。
お陰でセドリックにお祝いの言葉も言いに行けていない。
何よりロンとハリーは今や絶交状態らしく、ハーマイオニーが行ったり来たりしている。
溜息を吐いてページを捲り、羽根ペンを動かす。
課題をやりに来た図書館でさえ今やいつもの静けさがない。
よくハリーが居るのを目にしたから最初はハリーの事かと思った。
けれどどうやらビクトール・クラムのせいらしい。
「隣、座るぞ」
「ドラコ?」
かなり久しぶりに聞いた声と言葉に顔を上げる。
羊皮紙や教科書を広げ始めたドラコに頬が緩みかけたけれど、バッジを見つけて眉を寄せた。
バッジの存在は知っていたけれどドラコも付けていたのか。
「その趣味の悪いバッジ外しなさい」
「…僕が何を付けようが勝手だろう」
「そう。じゃあ私は席を変えるわ。見ていたくないもの」
「ま、待てっ!取れば良いんだろう?」
ドラコがムッとしながらバッジを外した。
バッジをポケットに入れたのを見て私は椅子に座り直す。
ムッとしているドラコの頭を撫でると少しだけ気分が直ったようだ。
本当はあんなバッジなど付けないのが一番なのだけど。
「名前は、名前を入れなかったのか?」
「うん。やる事があるから」
「ああ…そうだったな」
それきりドラコは課題に集中して一言も話さなくなった。
時折聞こえてくる女の子達の声を気にしないようにしながら羽根ペンを動かす。
課題を終わらせて魔法薬の本を捲りながら羊皮紙にメモをしていく。
そろそろもう一度調合が出来そうな気がする。
チャーリーに送って返事が来るまでに時間がかかるだろうから急がなければ。
ふと視線を感じて其方を見ると薄い青色の瞳が此方を見つめている。
「どうしたの?」
「役に、立つか?その本は」
「とっても役に立つわ。わざわざ持ってきてくれて有難う」
「お前は色々な事をやり過ぎなんだ」
眉を寄せて言うドラコに苦笑いを返してまたページを捲った。
課題を終わらせたらしいドラコは私の変身術の教科書を読み始める。
まだ四年生なのに七年生の教科書なんて面白いのだろうか。
そう考えて去年も同じ事を思った事を思い出した。
伸びをすると凝り固まった肩や首が音を立てる。
隣からクスクス笑う声が聞こえたので頬を突っつく。
それでも笑っているので放っておく事にした。
やがて笑いが収まったドラコは荷物を纏める私をジッと見つめる。
すっかり慣れてしまったけれどやはり居心地は良くない。
「何?」
「名前の…いや、やっぱり良い」
「気になるじゃない」
「片付けてきてやるよ」
「あ、ドラコ」
制止を聞かず私が持ってきた本を片付けに行ってしまった。
ドラコは一体何を聞こうとしていたのだろう。
残りの羊皮紙等を鞄に詰め込んで後を追いかける。
(20121204)
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