どういう訳かドラコに全く会えないまま時間だけが過ぎた。
ロン達が話しているのを聞いたら授業には出ているらしいので元気なのだろう。
最近は部屋でドラコから借りた本を読む事が多いせいもあるのかもしれない。
手紙の返事にも大丈夫と書いてあったから恐らく大丈夫なのだろう。
ハーマイオニーは屋敷しもべ妖精について熱心に行動していた。
私は屋敷しもべ妖精が楽しそうに働いているのを知っているのでバッジは丁寧に断る。
それをハーマイオニーはよしとせず熱く語りだそうとするので部屋に直ぐ逃げていた。
彼女の言い分は正しく、積極的になるべきなのだろうがそれを人間の方にも向けて欲しい。
同じマグル生まれの魔法使いなのだから解ってくれると思うのだけど。
「名前、どうしたのよ」
「ん、ちょっと考え事」
「せっかくの歓迎会なのに勿体無いわ」
シャロンがスリザリンのテーブルを見つめながら言う。
それに倣うと薄い青色の瞳を見つけた。
手を振るとドラコは得意気な笑顔を浮かべる。
グッと引っ張られて何事かと思えばシャロンだった。
「名前も見たでしょう?ビクトール・クラム」
「見たけど、私シーカーならチャーリーの方が良いわ」
「ビーターは勿論俺達だよな」
隣のジョージが得意気に言うのでシャロンが笑い出す。
キラキラの瞳が六つ、此方を見ている。
正確に言えば私がかき混ぜている大鍋を。
私はフレッド、ジョージ、リーに頼まれて老け薬を作っている。
何が起きても知らないし責任を取らないという条件付きだ。
出来上がった薬をゴブレットに入れて三人に渡せばそれぞれ笑顔になる。
「最高だ!愛してるぜ名前!」
「はいはい、それはアンジェリーナに言いなさい」
「名前、俺が選ばれたら応援してくれよ」
「リーだったら応援しても良いけど」
「俺は?」
「ジョージも応援するわよ。上手くいけばね。私が作ったって言わないでよ?」
大丈夫!と三人口を揃えて言うのを聞きながら道具を片付ける。
今から行くと言うのでシャロンにも声をかけて玄関ホールに行くとロン達が居た。
意気揚々とやる気を放っている三人に上手くいくとは思えないというハーマイオニーには心の底から同意する。
近くに居たジニーが此方に気付いて近寄ってきたので抱き締めるとふわふわした良い香りがした。
「私入れようかしら」
「あら、シャロンが入れるなら私全力で応援するわ」
「私も!シャロンが選ばれれたら嬉しい!」
「名前とジニーに言われたら入れるしかないわね」
シャロンがニヤリと笑った瞬間フレッドとジョージが吹き飛んでいく。
ポンと大きな音がしたと思ったら二人にはあっという間に白い長い髭が生えてきた。
玄関ホールに居た皆が大爆笑で、私も思わず笑いが込み上げる。
後ろから現れたダンブルドア先生はかなり楽しんでいるように見えた。
やはりダンブルドア先生はこういう事はお見通しだったのだろう。
その騒ぎの隙にシャロンがゴブレットに名前を入れて何食わぬ顔で戻ってきた。
気付いていた私とジニーは二人で拍手を送る。
課題をやる為に図書館に向かっていると誰かとぶつかりそうになった。
慌てて謝ると同じタイミングだったらしく声が重なる。
顔を上げてお互いの顔を見て驚くタイミングまで一緒だ。
「また会ったわね、ディゴリー。名前を入れたって聞いたわ」
「うん…名字、応援してくれる?」
「あら、困ったわ…私の親友も後輩も名前を入れたの」
「そっか、それなら親友を応援しなくちゃね」
にこりと微笑んだディゴリーの言葉に少し驚く。
噂には聞いていたけれど本当に好青年だ。
代表選手に選ばれたのなら今まで以上にモテるだろう。
「それじゃあ、私図書館に行くから」
「うん…あ、名字、良かったらセドリックって呼んで」
「解った。私も名前で良いわ。またねセドリック」
手を振るとセドリックも手を振り返しては歩き出す。
もしホグワーツの代表がセドリックなら彼を応援しよう。
(20121204)
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