テントに戻るとチャーリーに抱き付かれ、頭を撫でられた。
チャーリーのシャツが裂けていて、パーシーは鼻血を流している。
とりあえず、私は自分の鞄を呼び寄せてビルの腕の治療を始めた。
するとアーサーさんとロン達がテントに戻ってきて皆ホッと息を吐く。
ビルの腕に薬を塗りながら外で見た事を思い出す。
急に現れたあの印はヴォルデモートの印だ。
私はその印がどんな物でどういう意味を持つか知っている。
皆が印について話しているのを聞きながら今度は包帯を巻く。
死喰い人という単語が出るのは予想通りで、気分が落ち込んだ。
ドラコを思い出して苦々しい気持ちが溢れる。
包帯を巻き終えて今度は血を拭いていると話は終わったらしい。
「名前、後は自分でやるよ」
「ううん、やらせて」
「…解った」
腕を拭き終えると有難う、とビルがふわりと笑った。
首を横に振っておやすみと呟いてジニーとハーマイオニーとテントを出る。
ジニーはまだショックが抜けきらないようで、暗い顔をしていた。
ジニーの枕元に座って手を握っていると安心したらしい。ぐるぐると黒いローブの人達とドラコの事が頭を回っていた。
隠れ穴に戻り、キッチンで紅茶を飲んでいたのも皆の会話も覚えている。
けれど何処か意識がぼんやりしていて、パーシーが読み終えた新聞を眺めていた。
新聞には昨日の闇の印の写真が載っている。
隣に誰かが座る気配がして、なんとなくビルじゃないかなと思った。
ゆるゆると首を動かすとやっぱりビルが此方を見つめている。
おいで、と手を引かれて果樹園まで来ると隅っこにあった椅子に並んで座った。
キッチンとは違って今はビルと私の二人だけ。
ビルなら、と思って私は思い切って口を開いた。
「ねえビル…ルシウス・マルフォイは、やっぱり死喰い人?」
「…だと、思う。やらされていたと言ってはいるけど」
「そ、う」
苦々しい気持ちが広がって俯くと自分の足が目に入る。
隣に座るビルの足と比べると小さくて頼りない。
ポン、とビルの手が頭に乗っかった。
撫でるでもなく、ただそのまま乗せられているだけ。
そのままの状態でいると段々と落ち着いてくる。
父親が死喰い人だとしてもドラコはまだそうなった訳じゃない。
ヴォルデモートだって今は居ないのだ。
それならちゃんとドラコに解って貰えば良い。
「ビル、私頑張る」
「うん」
「上手くいくか解らないけど」
「大丈夫。応援してるよ」
顔を上げると大好きな笑顔のビルと目が合った。
大丈夫、私はまだやれる事が沢山ある筈。
「ビル、クィディッチやろう!チャーリー達と三対三で!」
ロンの声がして皆が果樹園に出てきた。
ビルが頷いて箒を取りに行ったのを見送って皆に向き直る。
「私見てても良い?」
「勿論さ!名前、俺に惚れても良いんだぜ?」
「有難うフレッド。私ビルとチャーリーを応援するわ」
そんな!と嘆くフレッドに皆が笑った。
(20121202)
139