夕食を食べに大広間へ入ると机が一つしかなくてそこに先生達が座っていた。
他には名前の知らない上級生や同級生が数人居るだけ。
私とビルで揃ったらしく、ダンブルドア先生は嬉しそうに手を叩いた。
クリスマスディナーはお昼に負けず劣らず豪華で私は少しずつ全てを食べる。


「最後だと思うとちょっと惜しいな」


ボソッとビルが言ったのを聞いてダンブルドア先生がニコニコと笑う。
来年も来ても良いとでも言いそうな雰囲気。
なんとなく視線を彷徨わせると幾つかある大きなクラッカーが目に入った。


「ねぇ、ビル。あれは何?」

「あれかい?じゃあ、一緒に鳴らそうか?」


一緒に一つのクラッカーの所へ行って思い切り紐を引っ張る。
瞬間、爆発が起きたかと思う程の大音量が響く。
私の耳にはキーンという音が残っていた。
中からは沢山の紙吹雪とサンタ帽、お菓子やチェスセット等が飛び出す。
ダンブルドア先生が嬉しそうにサンタ帽を被ったのを見て本物みたいだと思った。


「はい、名前」


ビルが差し出してくれたお菓子を見ていたらいきなり頭に何かが被さる。
何事かと頭を触ると先程飛び出したサンタ帽が乗っていた。
それを見たダンブルドア先生は嬉しそうに笑う。


「おぉ、ミス・名字とお揃いじゃの。似合っておる」

「有難う御座います」


被せた犯人を見ると微笑みながら似合うと言われてしまっては文句も言えない。
仕方無く私は今出てきたデザートをお皿に取って気を紛らわせる。


皆が食べ終わるとダンブルドア先生の提案でダンスをする事になった。
ダンスなんてした事が無かったのでダンブルドア先生とマクゴナガル先生が踊っているのを眺める。
他の上級生達は楽しそうに踊っていて、ハグリッドもリズムを取っていた。


「名前、踊ろうか?」

「え?でも、私踊った事無い」

「大丈夫。名前、僕と踊ってくれませんか?」


ビルが跪いて私に向かって手を差し出す。
私は顔が真っ赤になるのを感じながら自分の手を重ねた。
教えて貰った通りにビルの肩に手を置いて足を動かす。
最初は精一杯だったけれど慣れてくれば自然と足が動く。


「そう、上手だね」


間近でビルの笑顔を見て私の心臓は跳ねる。
いつもと違う近さといつもと違う雰囲気。
まるでこれは夢みたいだと思った。


「ちゃんとドレスだったら良かったのに」

「でも、今日の名前はサンタさんだよ」

「ビルが被せたんじゃない」

「可愛いよ」


今度こそ本当に心臓の音が聞こえてしまうんじゃないかと思った。
これだけ近いのだからもしかしたらもう聞こえているかもしれない。
顔は間違いなく自分でもわかるくらい真っ赤。


曲が終わるとダンブルドア先生が拍手をしてお開きになった。
グリフィンドール塔へ向かって階段を登りながらも私はまだふわふわ気分のまま。
まだサンタ帽を被っていて片手にはお菓子。
そして隣には歩調を合わせてくれるビルが居た。
明日は何をしようか、とかチェスの話をのんびりする。
談話室に入ると急に少しだけ寂しくなった。


「名前、今日は楽しかったよ」

「私も」

「おやすみ。また明日ね」


私の頭を撫でてビルは私を部屋へと促す。
扉に手をかけ、振り向いておやすみ、と言うとビルは笑った。


部屋に入ってそのままベッドに倒れ込む。
とても幸せな一日で、夢のようだった。
サンタ帽とブックマーカーを枕元に置く。
それを見てまた幸せな気分に包まれながら私は目を閉じた。




(20120628)
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